AYAの徒然草(10)  『「マネすること」は良いことです』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第10回 『「マネすること」は良いことです』

最近、三文字英語のビジネス用語を頻繁に目にします。例えば、「PLM」(Products Lifecycle Management)、「KPI」(Key Performance Indicator)、「CRM」(Customer Relationship Management)・・・など。

ではここで問題です。「TTP」とは一体何の略語でしょうか?みなさん、ご存じでしょうか?

私が最近読んだ本に、こんなことが書いてありました。
下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンでは、「がんばるタイム」と称して 12時半から 14時半までの 2時間は、電話をしたり、話をしたり、仕事の依頼をしたり、コピーを取ったりすることはもちろん、席を立って歩き回ることすら禁止して、自分の仕事だけに集中できる環境を作っているそうです。でもこのアイデア、元々は資生堂が実施していたものをマネしたらしいのです。他社のマネをして自社のパフォーマンスを上げることができるなら、「人のマネだから」と言って躊躇することはないという発想で、トリンプでは、オープンに資生堂のマネをしているのだとか。

また、トリンプでは、「良いものをマネすること」を「TTP」と呼び、この「がんばるタイム」のほかにも、「良いものをマネすること」を積極的に社員に推奨しているそうです。「良いものはなんでも TTP しましょう!」というふうに。

さて、さきほどの問題は、この「TTP」のことです。何の略語かおわかりになりましたでしょうか?

答は・・・、「徹底的にパクる」(Tettei Teki ni Pakuru)でした!
(英語じゃなくて、日本語の略でした!悪しからず。)

実は、この言葉を元々作ったのは、トリンプではなく、イオンだそうです。本当にどこまでも徹底された「マネ精神」ですよね。感服です。

トリンプでは、この「TTP」精神で、この他にもとってもユニークな仕事術を実践して、社員の生産性の向上を図っているそうです。

しかし、「マネすること」に、あまり良くないイメージを持つ人も多いと思います。確かに、「人のアイデアを盗む」と言えば聞こえは悪いですし、マネすることは個性がない、独創性がなくなると考えるのが一般的かもしれません。でも、本当にそうでしょうか?
赤ちゃんは、一番身近にいる大人である両親の話す言葉をマネしながら、言葉を覚えて行きます。関西弁を話す両親に育てられた赤ちゃんが、東京弁(標準語)で言葉を覚えていくことはありませんよね。また、学校の美術の授業で、有名な画家の絵を写し取る模写の勉強をしますよね。

赤ちゃんが言葉を覚えること、有名な画家の絵の模写をすることは、「盗み」でしょうか?独創性を奪うことになるでしょうか?私は逆だと思います。自分なりにものごとを考えたり表現したりするためのツールが言葉であり、自分ならではの感情表現の方法や筆のタッチ・色使いの方法を編み出すための基礎になるのが模写なのではないでしょうか。ある意味で、「マネすること」は、人の成長に必要なステップで、個性を身に付けるために、私たちには「マネ」が必要なんじゃないかとすら思うのです。

私の周りには「この人すごいなぁ」と思う人、尊敬できる人がたくさんいます。私は、尊敬する人の行動をマネする時に、表面的にその人の行動そのものをマネするだけではなく、「この人はどうしてこのように考えたのだろうか?」、「どうしてこの場面でこういう行動を取ったのだろうか?」と、もっと本質的なところまで考え合わせて行くよう心掛けています。そうしないと、その人の場合にはその「マネ」が有効だったとしても、私には当てはまらない場合もあるでしょうし、ある場面では、その「マネ」が通じたとしても、別の場面では使えなくなってしまいます。

つまり、自分流にアレンジしたり、いろんな場面で応用が効くようにするために、「マネ」の向こう側まで見るようにしているのです。そうして一度自分流にアレンジしたら、尊敬する人の更に上を行くすばらしい結果が出せるかもしれません。それに、一度応用の効くフレームワークが出来てしまえば、仕事の種類や相手が変わっても、オールマイティーに使いこなせる頼もしい武器にもなります。私がより私らしくあるために、より私らしい行動を取るために、積極的に「マネ」するようにしています。

そう言えば、「良いもの(ベスト)に学ぶ」ということは、「ベンチマーキング」という、企業の経営革新の手法の 1 つにもなっていますよね。確か、トヨタが開発した「かんばん方式」は、米国のスーパーマーケットからヒントを得て考案された生産工程の管理手法でしたよね。

「マネすること」は決して悪いことではありません。「マネすること」は、独創性や応用力を高めることにつながるのです。みなさんも、トリンプの「TTP」精神で、尊敬する人、憧れの人の行動や習慣をどんどんマネすることにしてしまってはいかがでしょうか。そして、いつしか「TTP」される側になってみたいと思いませんか。

<佐藤 彩子>