AYAの徒然草(24)  『ティダ アパ アパ』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第24回 『ティダ アパ アパ』

携帯電話を常に持ち歩き、手で握り締め、無いとそわそわしてしまう友達がいるんです。恋人からの携帯メールを今か今かと待っているのです。メールを送ってもすぐに返事が来ないと嘆き、「一体どうしたんだろう?何かあったのかなぁ?」、「私は嫌われたんだろうか???」と、常に相手に対して不安がよぎっているんです。しかし、彼からのメールが来ればその不安が解消されるかと言うとそうでもなく、来たら来たで、「いつもはメールの最後に『またメールするね』って書いてあるのに、今日は書いてなかった・・・。もうメールが来ないんじゃないか・・・。」と余計な心配をして一人で気を揉んでいるんです。私は彼女に、相手はそこまで深く考えて打っていないと思うから気にすることないよと励ましていますが、彼女は彼のメールの回数・返事の早さ、そしてメールの一言一句が気になってしょうがないみたいなんです。そんな彼女にとって、メールは生活の中心。そして、メールは来ても来なくても不安材料なんです。完全なメール依存症です。

「依存症」と言えば、常にアルコールを飲んでいないと不安になるアルコール依存症、常に誰かを好きでいたい、その相手からも常に確実な愛情が与えられないと不安になるという恋愛依存症などもありますよね。さきほどの携帯メールも、それにアルコールも恋愛も、本来は楽しいものなのに、依存してしまうばかりに「無いと不安なもの」になってしまい、挙句の果てには、「苦痛を与えるもの」にまでなってしまうんですから恐ろしいことです。

そんな「依存症」に陥りやすい傾向にある人は、几帳面な人・神経質な人・完璧主義な人に多いと聞いたことがあります。こういうタイプの人は、すぐに自分に満足できなくなったり、コンプレックスを感じたり、孤独を感じやすかったり、ストレスが溜まりやすい人が多く、その結果、現実逃避をしたくなり、依存症に走ってしまうケースが多いのだそうです。

そんなことを言っても、仕事には責任もあるし、忙しくてストレスは溜まるし、それに誰にだって仕事以外のことでも多少の悩みごとはあり、気が滅入ることだってあると思うんです。そんな時には、「ティダ アパ アパ」(Tidakapa apa)という言葉を呪文のように自分に言い聞かせてみてください。言葉の調子がおもしろいせいか、なんとなく気が楽になり、リラックスできるんですよ。

「ティダ アパ アパ」(Tidak apa apa)とは、インドネシア語で「問題ないよ!大丈夫!」、「そんなに考え込まないで!」、「気にしなくても大丈夫!」というような意味の言葉なんです。英語で言うと、「No problem」や「Nevermind」に近いと思います。インドネシアでは頻繁に耳にする言葉だそうです。

前職の私の上司が、私が仕事で行き詰っているような時によく、「ティダ アパ アパ」(Tidak apa apa)と声を掛けて励ましてくれていたんです。彼がインドネシアに駐在していた時、私と同じように仕事が上手くいかず考え込んでいるような時によく、同僚のインドネシア人から、「ティダ アパ アパ」(Tidak apa apa)という言葉と明るい笑顔で元気付けられていたそうなんです。きっと、インドネシア人から見ると、日本人は几帳面すぎるきらいがあるのかもしれませんね。そんな、細かいことを気にしないインドネシア人の気質と明るい笑顔で、考え込んでいる私の元上司が励まされている微笑ましい光景が想像でき、なんだかとても心が温かくなったんです。この話を聞いて以来、私も何か壁にぶち当たった時や落ち込むようなことがあった時、私自身でもこの言葉を呪文のように自分に言い聞かせて気を楽にするようになったんです。

依存症にならないためにも、また、複雑な現代社会をより良く生き抜くためにも、ストレスを抱え込まないことは大事です。それを防ぐためには、常に気を張っていないで、時にはインドネシア人の「ティダ アパ アパ」(Tidak apa apa)精神で、細かいことは気にせずに肩の力をすーっと抜き、気を楽にすることも大事なことなのかもしれませんね。

<佐藤 彩子>