AYAの徒然草(29)  『願望や期待することを最大限に発揮する方法』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第29回 『願望や期待することを最大限に発揮する方法』

よく、スポーツ選手は、本番前に、集中力を高めながら「成功している自分の姿」を思い描いていると聞きます。いわゆる「イメトレ」(イメージトレーニング)です。短距離走の選手が、スタート位置についた時に、理想的なスタートを切って一位でゴールに飛び込む姿をイメージしたり、野球選手がバッターボックスに入る前に、ホームランを打つことをイメージしたりすることです。こんなふうに、「イメトレ」は、「上手くできている姿」をイメージすることがポイントです。「失敗するかもしれない」とドキドキしながら本番に臨む選手よりも、実力を最大限に発揮できる可能性が高いのです。「イメトレ」は、スポーツ選手にとって、肉体的なトレーニングの他に必要不可欠な精神的なトレーニングなんです。

私がよく行くスポーツクラブのプールに、「プールサイドでは走らないこと!」と大きく書いてある注意書きが貼ってあります。プールではよく見る注意書きです。そこは、平日の昼間は、大人の他、小学生の子どもたちもたくさん通っているプールなので、これは主に子ども向けの貼り紙だと思うのですが、「プールサイドは濡れていて滑りやすいので、走ると転び、危険だから走るな!」と、怪我を防止するための注意ですよね。でも私は、この貼り紙を見る度に、あまり良くない貼り紙だなぁと思いながら目が行ってしまっているんです。

人間の脳の構造上、「望ましくない行動」を否定して「望ましい行動」を作ってそれを言い聞かせると、最初に脳に入ってきた「望ましくない行動」の方がイメージされ、それに行動が引きずられやすくなるという話を、以前、ある本で読んだことがあります。

つまり、この貼り紙を見ると、まず、プールサイドを「走っている」自分の姿を無意識にイメージし、その後、それを「否定形で打ち消す」というプロセスを踏んで理解をしてしまうんです。そうなると、思考の焦点が、最初にイメージする「走っている姿」の方に行ってしまい、行動がそれに引きずられやすくなってしまっている訳です。だから、この場合の貼り紙は、「プールサイドでは歩きましょう!」にすれば、最初から「歩く」という「肯定」の動作を無意識にイメージさせることができ、プールサイドを走る子どもは減ると思うんです。

また、このように、肯定的なことを最初からイメージする方が良いという人間の脳の構造が本当なら、スポーツ選手の「イメトレ」のように、肯定的に「自分が上手くやれている姿」をイメージすることは、夢や願望を叶え、更には人生を肯定的に生きる道筋を自ら作っていけるということの裏付けにもなると思うんです。

そして、夢や願望というような大きな目標に限らず、もっと身近で小さな目標を設定する時ですらこれを意識すると、効果に大きな違いが出てくると思うんです。例えば、お客様との大事な商談の前に、「今日のお客様との商談では、どうか、緊張しませんように」と自分に言い聞かせるよりも、「スムーズに話せて、お客様によく理解してもらえますように」と言い聞かせる方が、その時点で既に、無意識のうちに良い結果を導く方に気持ちが行っているような気がするのです。

これは、自分に言い聞かせる時だけではなく、さきほどのプールサイドの貼り紙のように、人に何かを期待する時などにも当てはまります。例えば、これから車を運転する人に対して、「飛ばさないでよ!」と言葉を掛けるよりは、「無事に帰ってきてね!」と声を掛ける方が、事故を起こす確率がうんと下がるような気がしませんか?

また、こんな場合にも応用できちゃうんですよ。多忙な彼に、時間を作ってデートをしてもらいたい時、「忙しそうだね。私と会う時間無い?」と聞くよりも、「忙しそうだね。私と会う時間ある?」と聞く方が、「時間がある」というイメージが無意識のうちに植え付き、例え本当に時間が無くても、時間を作る努力をしてくれて、デートをしてもらえる方向に自然と話が進むんです。ちょっとした言葉の違いですが、でも、効果は大なんですよ。

人に何かを期待するために言葉を掛ける時、何かの「否定形」で言う方が強調されて頭に残ると思いがちですが、でも、実は逆効果で、ストレートに望み通りのことを言ってその人の右脳に働きかけ、「肯定的なイメージ」を持ってもらった方が、期待通りの結果が得られるんです。「肯定的なイメージ」の威力は、絶大なんです。

<佐藤 彩子>