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今更聞けない財務用語シリーズ(30)『持分法適用会社』
日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。
第30回の今回は、持分法適用会社についてです。
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持分法適用会社とは、連結決算上「持分法」を適用する会社の事を言う。
「持分法」とは、資産や負債、費用・収益の各科目の明細を連結するのではなく、非投資会社に対する投資会社の持分比率に応じて、損益を投資額の補正という形で行う連結決算上の損益の連結する方法の一つである。
連結決算は、出資関係で結ばれたグループの財務状況を適正に投資家に開示する為のものである。この連結の方法にも大きくわけて 2 つある。子会社を連結する場合と持分法適用会社を連結する場合によって方法が異なるのだ。
1.子会社を連結する手法
議決権比率 50% 超(40%以上で要件を満たした子会社も含む)の会社は資産や負債、収益費用の全ての項目を連結(合算)する。議決権を過半数以上持っているということは、親会社の経営上の方針を子会社の経営方針と合致させることができる。つまりは親会社の一部門と同様に経営方針を決定できることから子会社の財務諸表の全ての項目を合算する。この為、子会社の連結を「全部連結」とも言う。
2.持分法適用会社を連結する手法
一方、持分法は過半数を持っていないことから経営上の重要事項に決定権を持つまでに至らない。但し、影響力を持つ議決権を保有していることから全ての財務諸表の項目を合算せず、投資先の財務状況を親会社の財務諸表上に表現する為に投資額を持分法適用会社の時価純資産額と合致させる処理を行っている。この時の合致させる手法が「関係会社株式/持分法投資利益」という一行の仕訳で行われることから持分法を「一行連結」とも呼ぶ。
「持分法を適用する会社」は持分比率が 20 %以上 50% 以下、もしくは、15%以上 20 %未満の会社のうち、経営上影響力を行使することのできる会社である。持分法適用会社とする要件は、議決権比率による形式的な要件と15%以上 20% 未満の実質的な要件と大きくわけて 2 つの要件がある。
ここで言う実質的な要件とは何だろうか。12月 8日に発表された「三菱重工が、三菱自動車を持分法適用会社とすること」を例に解説してみたい。
三菱重工は、三菱自動車の 12.94 %の株式を保有しており、第 2 位株主であった。しかし、今回フェニックスキャピタルが JP モルガン経由で株式を売却した為、筆頭株主となった。また当初の計画とおり、優先株式の普通株式への転換により議決権比率 15 %まで上げることで三菱重工が三菱自動車を持分法適用会社とすることになった、というのが今回の報道の趣旨である。
では、普通株式への転換後の比率が15%であるのになぜ、持分法適用会社とするのだろうか。
持分法適用会社の実質的な要件には、比率の要件の以外に「その会社に影響力を及ぼすことができること」という所謂影響力基準という基準がある。「影響力を及ぼすことができる」という判定には、以下のような例を挙げている。
1.役員を派遣している。
2.取引の主な販売先、仕入先となっている。
3.借入先になっている、保証を差し入れるなど、資金面での関係がある。
つまり、取締役会での決定に影響力を及ぼすことができる。もしくは、取引先となっており、親会社となる会社が持分法適用会社にとってなくてはならない存在となっていることが影響力の基準なのだ。
今回の三菱重工、三菱自動車の例であれば、三菱重工から役員を数名派遣しており、かつ同社の取引先にもなっているので影響力基準の要件は満たしてると考えられる。
今後は三菱自動車は三菱重工の関連会社として、対外的にも損益を合算される。今年 9月末の三菱自動車の純資産は、259,007 百万円である為、簿価純資産が時価純資産と同額と考えればこの15%相当の約38,851百万円が三菱重工の資産として計上されると思われる。
三菱自動車の価値が純資産とイコールと置いているのは会計の都合であり、実態がその通りなのかは解らない。連結決算は、バーチャルにグループの財務状況を表すものであり、あくまで取引の結果を投資家や債権者などのステークホルダーに正しく伝えるための手段である。今回も三菱重工が三菱自動車への資金面をはじめとしたサポートを行うことを決定し、サポートを行う為に必要な経営上の決定権を得る、またはそのサポートの結果を管理し、対策を考えるために役員を派遣したことの結果が、持分法適用会社となることにつながっている。
一方で、バーチャルではあるがメッセージとして企業が何をしようとしているかを伝える有力な手段でもある。取引先やお客様にも三菱グループの中核会社の一つである三菱重工が今後も継続して関連会社となる三菱自動車をサポートすることを明確にすることが伝わることが良い効果を生むのではないか、と考えられるように、会計上の処理の結果が取引先などの安心感を得るなど商売の現場にも影響を及ぼすことにつながるからだ。
連結決算はバーチャルなものでそれ自体は実態を表しきれない部分は多いが、そこでの正しい処理は経営者からのメッセージになることを忘れてはならない。
<篠崎 暁>