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エコカー減税と新車買い替え補助制度について考える
◆新車買い替え補助制度による販売増、自動車大手8社では三菱自動車のみ期待。
4月から実施されているエコカー減税による販売増を見込む企業が 5 社に対し、買い替え補助制度の効果を見込むのは三菱自動車 1 社にとどまった。
<2009年 05月 17日号掲載記事>
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【エコカー減税と新車買い替え補助制度の内容】
現在、新車を購入する際の援助制度として、既に実施されているエコカー減税と、今後、実施が予定されている新車買い替え補助の 2 種類がある。詳細は以下のとおりである。
・エコカー減税
車両重量と燃費の組み合わせで一定の基準を満たした新車を購入した場合に、重量税と取得税が減免される。
日刊自動車新聞によれば、100 %免除はハイブリッド車を中心に 11 車種、75%免除は軽自動車・小型車・ミニバンなど 29 車種、50 %免除は同 61 車種となっている。
・新車買い替え補助
車齢 13年以上経過した車を廃車にし、2010年度燃費基準を達成した新車に買い替えた場合に、登録車は 25 万円、軽自動車は 12.5 万円の補助を行う。
また、車齢 13年未満でも(廃車する必要もない)、2010年度燃費基準を 15%以上達成した新車に買い替えた場合に、登録車は 10 万円、軽自動車は 5 万円の補助を行う。商用車の場合には、20 万円~ 180 万円を補助する。
例えば、車齢 13年以上経過した車両を保有しているユーザが、インサイトを200 万円で購入した場合、エコカー減税と新車買い替え補助制度を適用すると、従来より、約 40 万円もお得になる(取得税 10 万円、重量税 5.6 万円、補助金 25 万円)。
【どれくらいの新車効果があるのか】
エコカー減税と新車買い替え補助制度の導入により、どれくらいの新車効果があるかには、様々な見方がある。
自工会は、約 100 万台増の効果があると見込んでいるという。国内の総需要を約 500 万台とすれば 20 %の増加効果となる。経産省では、新車買い替え補助台数を 約 280 万台と想定している(補助台数は、制度導入による増加効果だけでなく通常の買い替えサイクル需要も含まれる台数と思われる)。
例えば、ドイツでは、’09年 1月に日本での新車買い替え制度に類似する制度が導入され、昨年比で、’09年 1月はマイナスであったが、2月は 20 %、3月は40 %増加した。ただ、4月は 20 %増加と伸びが鈍化している。今後、どのように台数が推移するかは不透明である(ドイツでは 、’09年中に自動車税の課税基準を排気量から CO2 排出量に変更予定で、日本のエコカー減税に類似した税制となり台数が増加する可能性もある)。
また、フランスでは、’08年 12月に新車買い替え補助制度が導入されたが、昨年比で、’09年 1月、2月とマイナスが続き、3月は 10 %増加となったが、4月はまたマイナスに転じた。
更に、日本ではエコカー減税が導入された ’09年 4月の販売台数は、昨年比で 28.6 %のマイナスとなっている(車種別に見ると、インサイトがトップになるなど個別の効果は見られる)。
弊社メールマガジン読者の方々にお答え頂いてるワンクリックアンケートでも、新車買い替え補助制度の効果について質問させて頂いたところ、ドイツ以上に効果があるとお答えいただいた方が 14 %、ドイツ程ではないが一定量の効果があるとお答え頂いた方が 78 %、ほとんど効果がないとお答え頂いた方が 7 %という結果になった。市場環境や補助制度が違うため、一概には言えないが、日本でも一定量の効果があると見ている方が多いと考えられる。
【新車効果が見え難い理由】
ただ、今回、取り上げた記事が示しているように、特に、新車買い替え補助制度については、否定的な見方が多い(国内大手自動車メーカー 8 社の内、新車買い替え補助制度に効果を期待するのは三菱のみ)。
その理由は、新車買い替え補助制度の中心となる車齢 13年以上経過した保有台数自体が少ないことがあげられる。具体的には、乗用車では保有台数 57 百万台の内、 7百万台:約 20 %程度が対象となる。一方で、今のところ、一定の効果が見られるドイツの制度は 車齢 9年以上経過した車両が対象であり、乗用車保有台数 41 百万台の内、19 百万台:約 50 %程度が対象となっている。
また、自動車メーカーを始めとした売り手側も、買い替えサイクルの早い顧客は重点的に顧客 DB で管理していると思われるが、車齢が 13年以上経過した車両を保有している顧客となると、顧客 DB から漏れている顧客もいるのではないだろうか。
顧客 DB がないと、売り手側からアプローチができないから(もちろん、飛び込み営業はあるが)、顧客からのアプローチを待たざるを得ない。その場合、営業力も弱まるだろう。
更に言えば、車齢 13年以上経過した車両を保有している顧客は、その車両に相当の愛着がある層や、費用対効果を重視する考え方、壊れるまで買い替えない考え方を持った層もいると思われ、そうした顧客が、今回の新車買い替え補助制度を積極的に利用するだろうか。
一概には言えないが、新車から 3年後の残価を 概ね 50 %とすると、3年落ちの中古車であれば新車の半額程度で購入できる。費用対効果を重視する顧客が、新車買い替え補助制度よりも、割安な中古車を選択することは想像に難くない。
そうすると、現在保有車の車齢に制限のない、エコカー減税の方に期待が寄せられる。実際、今回、取り上げた記事でも、国内大手自動車メーカー 8 社の内、エコカー減税に効果を期待するのは 5 社となっている。
しかし、エコカー減税は、新車買い替え補助制度に比べて、対象車種も限定され、価格メリットも低い。こうした理由から、今回の制度が中途半端という意見も少なくない。
【終わりに】
エコカー減税や新車買い替え補助制度には、共通して環境対応という概念が盛り込まれている。その概念が具体化され、燃費基準や車齢の制限として表れいる。
環境対応という観点から、改めて、今回の制度を見てみると、本来の主旨とは矛盾するところがある。例えば、エコカー減税制度で 100 %減免となるのは、ハイブリッド車 10 車種とディーゼルのエクストレイルであるが、燃費だけ見ると、ハリアーやクラウン・ハイブリッドよりも、燃費の良いガソリン車種が多くある。
また、同じ車種であっても、レザーパッケージのグレードにすると 50 %減免から 75 %減免対象となる車種もある。燃費だけでなく、車両重量との兼ね合いで、減免度合いが決まるからだ。
一方で、例えば、フランスでは、CO2 排出量のみで奨励制度が定められている。CO2 排出量が 160kg / km 以上の場合は最大で 40 万円程度の課徴金、130kg / km 以下の場合は 15 万円程度の補助金が受けられるといった制度だ。
国内では、プリウスやインサイトに見るようにハイブリッド車熱が高まっているが、ハイブリッド車は環境対応の一つの手段でしかないと思う。既存のガソリン車であっても、燃費改善によるメリットを享受できるような枠組みでの支援が求められているのではないだろうか。
<宝来(加藤) 啓>