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ハイブリッド車ブームによるユーザーの購買意識の変化
◆トヨタ「プリウスα」、発売1か月で5万2000台受注
5月に発売した新型車「プリウスα」が約1か月で5万2000台を受注したと発
表した。内訳は2列シート車が約3万8000台、3列シート車が約1万4000台で、
月販目標台数だった3000台を大幅に超えた。使い勝手の良い広く快適な室内
空間、燃費性能、充実した …
注文客は50代が19%と最多、60代以上が18%、40代が17%、30代が13%など。
東日本大震災による減産の影響で、注文から納車まで約10カ月かかる見通し。
現時点で注文した場合、納車は来年4月以降になるという。発売段階でも
2.5万台の先行受注があったが、1カ月で2.7万台が上積みされた。
同社の新車発売後1カ月の受注台数としては、2009年5月に発売した現行の
「プリウス」(約18万台)に次いで歴代2位。…
<2011年06月14日号掲載記事>
◆ホンダ、「フィットシャトル」発売 、すでに7000台受注
「フィット」をベースにし、荷物スペースを広くしたワゴンタイプ。荷室の
容量は最大590Lを確保した。ハイブリッド車(HV)とガソリン車の2種類をそろ
えた。価格はガソリン車が165万円、HVが185万円で、従来のフィットよりい
ずれも26万円高く設定した。..
震災後、難航していた部品調達にメドが付き、当初予定から3カ月遅れで発
売にこぎ着けた。1カ月あたりの販売目標は4000台だが、すでに7000台の受
注を受けた。そのうち震災前の予約分については6月中に納車できるという。
<2011年06月16日号掲載記事>
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【トヨタとホンダの新型ハイブリッド車】
トヨタとホンダの新型ハイブリッド車が国内市場の注目を集めている。トヨ
タの「プリウスα」とホンダの「フィットシャトル」である。
「プリウスα」は、ミニバン形状のボディを持つプリウスの派生車で、2 列
シートに加えて、3 列シートも用意される。今なお人気を保つプリウス譲りの
燃費性能に、使い勝手の良い室内空間や荷室が加わったということで、人気を
集めている。
一方、「フィットシャトル」は、「フィット」のワゴンタイプで、本家の
「フィット」同様、ハイブリッド仕様が用意されている。「フィット」(及び
「フィットハイブリッド」)の燃費性能に、居住空間を広げて使いやすさを高
めるという流れは、「プリウスα」に通じるところがある。ハイブリッド車専
用車種ではないものの、同車販売台数全体の 7 割をハイブリッド車が占めるこ
とを計画しているといい、実際、6月 16日時点で 7 千台受注したうちの 8 割
がハイブリッド車という。
両車種とも、本来、もっと早く市場投入される予定であったが、震災の影響
で発売が延期となっていた。「プリウスα」は 4月下旬の予定が 5月 13日に、
「フィットシャトル」は 3月 17日の予定が 6月 16日にずれ込んだ。しかしな
がら、両車種とも先行受注も含めて大きく受注を積み上げている。特に「プリ
ウスα」に至っては、発売 1 カ月で 52 千台の受注台数を積み上げており、こ
れから注文しても、納車は来年 4月以降になるという報道もある。
ハイブリッド車ブームを巻き起こした「プリウス」と「インサイト」に続く、
トヨタ対ホンダのハイブリッド車対決第 2 ラウンドという印象である。今回、
両社とも「プリウス」と「フィット」の派生車としたネーミングにも、車種別
販売ランキングを意識したことを感じさせる。この 2 車種がどこまで今年の国
内市場を牽引できるか、注目を集めている。
【ハイブリッド車の方向性】
2年前の国内市場を思い返すと、まさに空前のハイブリッド車ブームとなって
いた。ホンダ「インサイト」、トヨタ「プリウス」の発売に加え、低迷する景
気打開策として導入されたエコカー補助金制度等が追い風となり、両車種とも
受注台数を積み上げ、納車に数カ月待つという状態が恒常化してきていた。
昨年 2月のコラムでは、ホンダ「CR-Z」の発売を踏まえ、ブームが継続する
中で徐々に多様化するハイブリッド車の方向性に、新しい方向性へのチャレン
ジも始まってきていることについて書かせて頂いた。
『ハイブリッド車の方向性』↓
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=223
この視点からすれば、今回の 2 車種は、エコロジー×エコノミーの派生形と
して、居住空間や使い勝手の要素を加味したようなところであろう。これまで
にもハイブリッド仕様のミニバンは市場投入されてきたが、燃費性能を向上さ
せてハイブリッド車としての意義を強化したことや、昨今のトレンドの一つで
もある「大きすぎない適度なボディサイズ」を取り入れたこともあり、今回の
ヒットにつながったと思われる。
【ユーザーの購買意識の変化】
こうしたハイブリッド車ブームを通じて、ユーザーの購買意識も大きく変わ
りつつあると考えている。欲しいクルマの為には、納車に数カ月も待つという
状態が恒常化してきているという点である。
これまで、何らかの限定車やスポーツカー等の特定のモデルを除いて、納車
に数カ月、場合によっては 1年以上も待つというのは極めて稀な状態であった。
これは、成熟している国内の乗用車市場において、約 8 割が保有しているクル
マからの代替での購入であることに大きく起因していると考えている。
自動車工業会が毎年発表している「乗用車市場動向調査」(2009年度版)に
おける国内の自動車ユーザーアンケート調査の結果よれば、クルマを買い替え
た理由の上位 5 項目は以下の通りである。
『クルマを買い替えた理由』(新車購入者+中古車購入者)
(1)車検時期が来たので(30%)
(2)車体が傷んできたので(30%)
(3)燃費が悪いので(13%)
(4)子供も成長で車の使い方が変わった(11%)
(5)エンジン性能が低下したので(11%)
『クルマを買い替えた理由』(新車購入者のみ)
(1)車体が傷んできたので(30%)
(2)車検時期が来たので(29%)
(3)エコカー減税・補助金制度の施行で(25%)
(4)燃費が悪いので(20%)
(5)下取り条件が悪くならないうちに(11%)
「車検時期」と「車体の傷み」については過去数年連続で 3 割前後の票を集
めているが、「燃費が悪い」については年々増加傾向にある。加え、新車にお
いては、「エコカー減税・補助金」が大きく票を伸ばす形になっている。
既にクルマを保有しているユーザーにとって、クルマが移動手段として生活
に不可欠な存在であるケースが多い。「車検時期」や「車両の傷み」でクルマ
の買い替えを検討するユーザーにとっては、時間的な制約があることも想定さ
れ、数か月も納車を待つということは選択肢として考えにくいはずである。販
売店側も、売上を計上するタイミングを考慮すると、早く納車できるもの、中
には在庫を確保しているものを中心にお薦めしてきたことが想像できる。
ところが、「燃費が悪い」ので買い替えるユーザーについては、これまでの
買い替え需要と異なり、時間的な制約条件が変わっているはずである。エコカー
減税・補助金制度の効果も一定割合を占めていたことが報告されており、これ
については補助金申請の期限という時間的な制約があったが、これまでの要因
とは少しタイミングが異なっていたはずである。これが、前述の納車待ちにつ
ながっていた可能性が高いと考える。
【製品ラインナップへの影響】
前述のアンケート調査によれば、クルマを購入する際に重視するポイントと
して、ユーザーの約 7 割が「燃費性能」を挙げており、年々増加傾向にある。
製品開発の視点から考えれば、「燃費性能」に代表される製品の性能・機能を
追求し、製品の魅力をユーザーに訴求していくことが増々求められるというこ
とである。
実際、近年の国内乗用車市場における車種別販売台数ランキングにもその傾
向が表れている。自動車販売協会連合会が発表している車種別販売台数ランキ
ングをもとに、過去 5年の傾向を見ると、以下の通りとなっている。
『販売台数ランキング上位●モデルが乗用車市場全体に占める割合』
2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度
5位まで 29.5% 26.7% 21.3% 19.5% 17.7%
10位まで 42.3% 41.2% 33.9% 31.1% 29.3%
20位まで 60.1% 61.2% 53.4% 49.7% 48.3%
30位まで 70.9% 72.8% 65.6% 62.6% 61.8%
『販売台数が年間●万台以上のモデル数』
5万台以上 15種 18種 14種 18種 19種
4万台以上 19種 21種 19種 23種 26種
販売台数ランキング上位が占める割合が年々増加傾向にあり、特に上位 5 車
種が全体の 3 割を占めるところまで来ている。2000年代前半までさかのぼって
みると、モデルの多様化が進み、上位車種の占める割合が低下する傾向にあっ
たが、2006年度からは上位集約傾向が進んでいる。もっとも、この統計自体は、
モデルのネーミング上、派生車も含めた形になっているので、5 車種のみで全
体の 3 割と言い切ることはできないが、人気車種に販売が集中する傾向が高ま
っているとは言えるはずである。
一方で、開発・生産する自動車メーカーの立場からすれば、投入する新型車
の販売台数は一定レベルを担保したいところである。しかしながら、年間 5 万
台以上、及び 4 万台以上販売するモデル数は徐々に減少傾向にある。
こうした現状から考えれば、製品の性能・機能を高めて、ユーザーが買い替
えたいと思うような製品を投入していくことが求められており、モデル数の絞
り込みも含めて、製品ラインナップを考えていく必要があろう。
<本條 聡>