部品共通化が自動車産業に与える影響とその対応

2007年 10月から自動車業界に関連するあらゆる傾向をアンケート調査してきた
「住商アビーム 1 クリックアンケート」が 2011年 2月からリニューアル致し
ました。ご回答頂いた皆様の声をもとに、翌月、このテーマに関するレポート
を発表致します。

今月の特集は「部品共通化が自動車産業に与える影響とその対応」です。

 

 部品共通化が進展していく領域について
 (2011年8月2日配信分)

質問

 東日本大震災の影響による部品供給網の寸断はご周知の通りです。主に、被
災メーカーの代替部品が存在しない事、或いは代替調達が困難であった事が大き
な要因として挙げられます。

 これを受け、経済産業省主導の下、主に汎用性の高いゴムや樹脂などの素材
を中心として、自動車メーカーの枠を超えた共通化の検討が開始されておりま
す。対象部品の範囲拡大も検討されており、2~ 3年後までには実用化を目指す
予定となっております。

 トヨタは、メーカー間で性能にあまり差が無いマイコンなどの共通化や、ゴ
ム、プラスチックなど素材の一部を今後共通化していく事を表明しており、日
産も、グループを超えた部品の共通化に力を入れる方針を明らかにしておりま
す。ホンダもまた、部品競争力を確保しながらも、メーカー間での行き過ぎた
仕様細分化の是正に今後努めていくなど、各自動車メーカーとも前向きな考え
方を示しております。
 自動車業界に携わっている皆様方の実感として、部品共通化はどの領域まで
進展していくと思われますか。以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはま
ると考えられるものを一つお選び下さい。

1. 自動車メーカーの枠を超え、領域を設けずあらゆる部品で共通化が進展して
  いく

2. 自動車メーカーの枠を超え、「走る・曲がる・止まる」といった基本性能の
  領域において部品共通化が進展していく

3. 自動車メーカーの枠を超え、基本性能には関わらない素材などの領域で部品
  共通化が進展していく

4. 現実的には自動車メーカーの枠は超えられず、自社内での部品共通化に留ま
  る

アンケート結果

 

 部品サプライヤーが、最も独自性を打ち出しやすい部品領域について
 (2011年8月9日配信分)

質問

先月、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が専門部会を設置し、装置に搭載す
る部材のメーカー間代替生産が出来るよう、個別仕様の設計見直しなどの共通
化検討を開始致しました。

 これは、有事においても部品供給が途絶えないようにする為の、メーカー間
部品融通を視野に入れた「部品製造領域」での共通化の動きであり、半導体製
造以外の分野でも進んでいくと思われます。

 自動車メーカーに部品を供給する幾階層もの部品サプライヤーにとっては、
「自動車メーカーの枠を超えた部品共通化」と「製造領域での共通化」の二つ
の共通化の流れの中で、どのように競合サプライヤーとの競争力を確保してい
くのかが、大きな課題となっていくと思われます。

 今後は、自社製品に対する「共通化可能な部分」(共存領域)と、「独自性
を打ち出す部分」(競争領域)の棲み分けを、設計的な観点や製造的な観点か
ら、より一層明確に把握/分類していく必要があると思われます。

 では、部品サプライヤーの視点から、最も独自性を打ち出しやすい(競争領
域において、差別化を明確にでき、競争力を発揮しやすい)部品領域は以下の
どれだと思われますか。以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考
えられるものを一つお選び下さい。
  
1. エンジン部品

2. 駆動、伝導部品

3. 操縦、懸架、制動部品

4. 内装部品

5. 外装部品

6. 電装部品

7. その他(電気自動車関連部品 など)
 

アンケート結果

 

 部品 共通化を推進していく中で最も障壁になると思われる項目について
(2011年8月23日配信分)

質問

 

 経済産業省主導のもと進められている「自動車メーカーの枠を越えた部品共
通化」は、自動車メーカー毎に細分化されている仕様を統一化しようとする活
動です。

 各車両特性に合わせ個別最適で部品を設計・評価する所謂「擦り合わせ型製
品」の代表格である自動車/自動車部品に対し、独自(競争優位)性の不必要
な領域を見極めるべく、各部品/素材領域において慎重に「専用品」から「汎
用品」への移行可能性が検討されております。

 部品共通化による「専用品」の「汎用品」化には、部品使用側(自動車メー
カー)/部品供給側(部品サプライヤー)の両側面において長期的な観点から、
開発工数の減少や、仕様差減少に伴う量の効果(原価低減)などのプラスの側
面がある一方で、その推進には様々な障壁が存在すると思われます。

 製品や構成部品のレベルによって違いがあるとは思いますが、自動車メーカー
の枠を越えて部品共通化を推進していく中で最も障壁になると思われる項目は
どれだと考えますか。以下選択肢の中で、最も当てはまるものを一つお選び下
さい。
1. 自動車メーカーが、自社製品の中で独自性を発揮する領域を明確化する事
  – 「汎用品」化しても独自性を失わない領域の抽出
  – 「汎用品」の使用範囲が拡大しても独自性を発揮できる手法の考察 など
 

2. 自動車メーカーが、要求性能を競合自動車メーカーへ開示する事
  – 自社の既存要求性能(専用品時)の開示可能範囲判断
  – 開示可能な要求性能に対する自社基準の考え方提供 など
 

3. 自動車メーカーが、要求性能を競合自動車メーカーと統一化する事
  – 自社の既存要求性能(専用品時)との乖離把握と受け入れ
  – 部品/素材供給側(サプライヤー)への要求仕様書統一化 など
 

4. 部品サプライヤーが、保有する複数仕様を統一化する事
  – 「専用品」の仕様削減に伴う「汎用品」への仕様統合
  – 自社海外生産部品との同一仕様検討・実施 など
 

3. 部品サプライヤーが、全供給先における統一要求性能を満足する「汎用品」
  を生産する事
  – 統一要求性能に適合する為の技術力・調整力の保有
  – 「汎用品」化に伴う量の増加を受けた生産能力/設備の確保 など

6. その他

アンケート結果

 

                  

部品共通化に基づく、バックアップサプライチェーンの構築について
(2011年8月30日配信分)

質問

 

 東日本大震災で生じたサプライチェーン早期復興への障壁要因として、代替
部品調達が非常に困難であった事が挙げられます。

 経済産業省主導の下、推進されている部品共通化により、自動車メーカーの
枠を越えて各部品の共通領域拡大が見込まれております。

 このような共通領域については、有事における代替調達手段等を自動車メー
カーと、複数の部品サプライヤー間で予め決定しておく事、即ち「バックアッ
プとしてのサプライチェーン構築」が今後重要になってくるものと思われます。

 その為には、部品サプライヤー同士の「横の繋がり」を今後より一層密にし
て、有事に対する供給体制を事前に各業界で確保しておくなど、サプライヤー
同士の連携は欠かす事が出来ません。

 部品共通化を推し進め、有事におけるバックアップ体制を早期に構築するに
当たり、自動車メーカーや、各部品サプライヤーにおいて最も考慮する必要が
あると思われる項目は、以下のどれだと思われますか。以下選択肢の中で、読
者の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお選び下さい。
 
1. 自動車メーカーにおける、代替調達可否部品の一覧化
  – 海外生産部品も含めた代替調達が、可能な部品か否かを瞬時に判定出来る
   ような仕組みの構築 など
 
2. 自動車メーカー主導による、部品サプライヤー間共通領域の「見える化」
  – 各部品サプライヤー(各工場ラインやショップレベル)での共通領域と
   専門領域の差別化
  – 代替可能な生産量の事前把握 など
 
3. 自動車メーカー主導による、部品サプライヤー間での生産融通取り決め
  – 共通領域における、統一化された設備や冶工具の賃借、契約 など
 
4. 自動車メーカーにおける、代替調達ルートの策定・確保
  – 代替調達時の物流網(輸送メーカー・形態・倉庫等)の確保と
   費用負担 など
 
5. 自動車メーカーにおける、代替調達方法の構築
  – 緊急時における受発注システムや業務フローの事前構築・策定 など
 
6. その他

アンケート結果