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車両予防安全技術の将来動向について
2007年 10月から自動車業界に関連するあらゆる傾向をアンケート調査してきた
「住商アビーム 1 クリックアンケート」が 2011年 2月からリニューアル致し
ました。ご回答頂いた皆様の声をもとに、翌月、このテーマに関するレポート
を発表致します。
今月の特集は「車両予防安全技術の将来動向について」です。
将来的な交通事故発生件数の動向について
(2011年10月4日配信分)
質問
財団法人 交通事故総合分析センターの統計に基づき、日本における交通事
故発生状況を、平成 7年/ 平成 14年/ 平成 21年の各年で比較すると下記の
ようになっております。
平成 7年 平成 14年 平成 21年
交通死亡事故発生件数 10,227 件 7,993 件 4,773 件
交通事故発生件数 約 76 万件 約 94 万件 約 74 万件
交通事故負傷者数 約 92 万人 約 117万人 約 91 万人
車両保有台数(※1) 約 8,497 万台 約 9,011 万台 約 9,046 万台
※1:二輪車等含む
交通死亡事故発生件数はこの 15年で半数以下となっております。様々な要因
があるとは思いますが、衝突安全ボディーやエアバックの採用、チャイルドシー
ト着用義務化などのパッシブ・セーフティ(衝突安全)の技術進化も、死亡事
故発生件数削減に寄与している大きな要素だと思われます。
一方で、交通事故発生件数や負傷者数はこの 15年間で、あまり変化していな
い事が見てとれます。(平成 14年比較では、共に減少傾向にあります。)その
対策として、各社とも近年、事故機会の未然防止を目指したアクティブ・セー
フティ(予防安全)分野での技術開発に力を入れてきております。
今年 7月、富士重工業が、衝突の危険を回避して自動で車両を停止させる安
全運転支援システム「アイサイト」を、今後 2年以内に同社で生産する全車種
に搭載する方針を明らかにしました。
「アイサイト」は、前方の車両や歩行者を認識し衝突の恐れがある場合には
自動でブレーキをかけ、時速 30 キロ以内であれば、完全に停止する事が出来
ます。このシステムは、ABS (アンチロックブレーキシステム) などと並び、自
動車事故を未然に防ぐアクティブ・セーフティの代表的な技術といえます。
ドライバーの運転技術やモラルに起因する交通事故、車両保有人口構成の変
化など、車両への先進技術搭載だけではカバーが難しい範囲もあるとは思いま
すが、このようなアクティブ・セーフティの技術進化に伴い、将来的な交通事
故発生件数はどのように推移すると予測されますか。以下選択肢の中で、読者
の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお選び下さい。
1. 減少傾向となる
– 人為的なミスをカバーする車両運動制御への更なる介入 など
2. 増加傾向となる
– 高齢者ドライバーの増加や各種車両制御への過信、注意力低下 など
3. 変化なし
– ドライバーの意識が変わらなければ変化無し など
アンケート結果
今後より一層期待するアクティブ・セーフティ技術について
(2011年10月11日配信分)
質問
平成 21年における交通事故発生件数、約 73.7 万件の事故類型別件数は、財
団法人 交通事故総合分析センターの統計に基づくと、下記のようになってお
ります。
- 車両相互:約 63.3 万件
- 人対車両:約 6.8 万件
- 車両単独:約 3.6 万件
車両相互の事故件数が最も多く、中でも追突(約 23.3 万件)と、出会い頭
衝突(約 19.9 万件)が突出しております。
人対車両事故や車両単独事故も含め交通事故は、ドライバーの不注意や、安
全運転義務違反によるところが大きく、アクティブ・セーフティ技術は、その
ようなドライバーの状態や運転技術を機械的に支援するシステムとなります。
これはまさに、ドライバー以外の「二つめの知能」を自動車という機械に持
たせる事であり、前号でご紹介した富士重工業の「アイサイト」は、画像認識
と車両制動を連動させる事により「二つめの知能」を形成しております。
また、同様に ABS (アンチロックブレーキシステム)や ESC (横滑り防止
装置)は、センサーで車両状態を検知し、車両運動制御と連動させる事により
「二つめの知能」を形成しております。
他にも、ミリ波レーダーを用いた他車両検出手法や、インフラを用いた情報
連携による手法など、「二つめの知能」を構築させる手法は種々存在すると思
いますが、今後上記交通事故発生件数を減少させる為のアクティブ・セーフテ
ィ技術として、読者の皆様が最も期待している項目はどれでしょうか。以下選
択肢の中から一つお選び下さい。
1. カメラ/レーダーを用いた周囲環境の把握と、車両運動制御への連動
2. センサーを用いた車両状態の把握と、異常時の車両運動制御への連動
3. インフラとの連携による他車両の存在把握と、車両運動制御への連動
4. ドライバーの運転状態検知と、車両運動制御への連動
5. その他
アンケート結果
アクティブ・セーフティ技術の一環として、普及を期待する ITS 技術
(2011年10月18日配信分)
質問
先日、日産自動車が「セーフティ・シールド」コンセプトの下で開発を進め
ている最新安全技術を公開致しました。
今回公開された「ペダル踏み間違い事故軽減技術」や「リアカメラを用いた
マルチセンシングシステム」は、カメラを用いて車の周辺状況を把握し、ドラ
イバーの誤動作時に車両を適切に制御したり、操作時にドライバーに注意を促
したりして、事故を未然に防ぐアクティブ・セーフティ技術です。
また、レーダーを使用して 2台前を走る車両の動向を検知し、自車の減速が
必要と判断された場合には、ドライバーへ早期に警告する「前方衝突予測警報
システム」も公開され、それぞれ近年中の商品化を目指しております。
既に多くの車両に標準装備されている ABS (アンチロックブレーキシステム)
を始め、自車の走行状態や周辺環境を自車システムで検知し、事故を未然に防
ぐ為の制御を行ったり、ドライバーに注意を促したりするアクティブ・セーフ
ティ技術は、近年急速に商品化されてきております。
一方で、見通しの悪いカーブ・交差点や、歩行者・自転車を巻き込んだ事故
等、相手や周辺状況を自車のみで検知する事が難しいケースも存在します。こ
のようなケースに対応すべく、路側に設置されたインフラと車両の間で通信を
行う路車協調型システムの開発も進められております。
2006年に内閣官房を取りまとめとして設置された「ITS 推進協議会」主導の
下、インフラ協調型安全運転支援システムの大規模実証実験が、2008年より官
民一体となって各地で行われました。「ITS-Safety2010」と題したこのプロジ
ェクトでは様々な ITS 技術の実験が行われ、各技術の事故低減への寄与度など
を定量的に評価し、今後の展開可能性が検討されました。
これらの技術の内、路車協調システムの一部が東京都や神奈川県などに設置
されたり、全国の高速道路(約 1,600 箇所)に ITS スポットサービスが設置
されたりと、実用化への動きも活発化しております。
インフラ連携がキーとなる ITS 技術は、自動車メーカーの努力だけでは商品
化出来ない部分も多く、各国行政などの協力も必要となります。全世界的に同
一技術を一斉展開するのは難しいとは思いますが、同協議会が定義している安
全運転支援システム体系の内、読者の皆様が最も普及を期待する項目はどれで
しょうか。以下選択肢の中から一つお選び下さい。
1. 路車間通信システム
(車両が路側設備との無線通信により情報を入手し、
必要に応じて運転者に情報提供、注意喚起、警報等を行うシステム)
– 渋滞情報や交差点右折待ち情報を路側から後続車両へ提供するシステム
– 路側で検出した交差道路状況を、交差点進入車両へ提供するシステム
– 横断歩道横断中の歩行者情報を路側で検知し、車両側へ提供するシステム
など
2. 車車間通信システム
(車両が他車両に搭載された機器との無線通信により情報を入手し、
必要に応じて運転者に情報提供、注意喚起、警報等を行うシステム)
– 停止/低速走行車両が、自車状態を後続車両へ直接提供するシステム
– 自車の走行状況を、近接車両へ直接情報提供するシステム(交差点等)
– 自車直進情報を、対向右折待ち車両へ直接提供するシステム など
3. 歩行者通信システム
(歩行者の位置を特定し、車両や道路と無線相互通信を行うシステム)
– 歩行者から車両側/路側へ、存在情報を提供するシステム など
4. その他
– 路側による車両・歩行者等の情報検出と、交差路脇にある警告灯
への表示システム(車両への通信は行わない) など
アンケート結果
アクティブ・セーフティ技術の普及促進の為に最も重要な項目について
(2011年10月25日配信分)
質問
2010年 12月、国土交通省は、アクティブ・セーフティ技術の代表格である
「横滑り防止装置(ESC)」を 2012年 10月(軽自動車は 2014年 10月)以降に
装着義務化とする決定を致しました。 2005年のデータではありますが、独立行
政法人 自動車事故対策機構(NASVA)によると、ESC 装着により車両単独事故
や正面衝突事故等が 36 %減少することが認められております。
また、その他のアクティブ・セーフティ技術に対する認知向上の動きも、世
界的に活発化しております、2010年 2月には、欧州連合の政策執行機関である
欧州委員会が、欧州での先進運転支援システムをプロモーションする「eSafety
Challenge」に対し、160 万ユーロの資金提供する事を合意致しました。
このように、様々なアクティブ・セーフティ技術が、その技術の成熟度に基
づき、普及への道を辿っております。それぞれの技術特性やインフラとの関連
性により、普及へのアプローチは異なると思いますが、日本におけるアクティ
ブ・セーフティ技術の普及促進の為に、読者の皆様が最も重要だと思われる項
目はどれでしょうか。以下選択肢の中から一つお選び下さい。
1. 各技術のプロモーション
– 試乗会促進等、各ディーラーでの積極アピールによる消費者の認知度向上
– メディアなどによる、各技術の交通事故低減寄与度アピール など
2. 技術開発による低価格化
– 全車種一斉展開によるボリューム効果
– 複数のアクティブ・セーフティ技術で、同一信号を使用する事
による部品点数削減 など
3. 政府や保険機関による推奨活動
– アクティブ・セーフティ技術搭載車に対する補助金等のインセンティブ
– 車両保険料の低減 など
4. 政府による法制化
– 事故低減効果確認後の、各アクティブ・セーフティ技術装着義務化
– アセスメント時の評価基準追加(装着有無) など
5. その他
– 新技術に対するフェールセーフ等の評価基準構築や安全性強化 など