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東京モーターショーについて
今回は、「東京モーターショーについて」をテーマとした以下 4 問のアンケー
ト結果を踏まえてレポートを配信致します。
https://www.sc-abeam.com/sc/library_s/enquete/6044.html
・「一般来場者が、東京モーターショーで見たいと思われるクルマについて」
・「モーターショーを通じ、世界中への発信を最も期待する技術について」
・「今回のモーターショーで最も印象に残った国産乗用車メーカーについて」
・「将来的な東京モーターショーの位置づけについて」
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先月開催された第 42 回東京モーターショーには約 84 万人(会期 10日間)
が訪れ、約 61 万人(会期 13日間)であった前回のモーターショーを大きく上
回り、来場者数という観点からは成功裏に閉幕した。
併設の「Smart Mobility City 2011」では、クルマ・都市・人々の暮らしに
結びつく先端技術が数多く発信されるなど、先回のモーターショーに比べ、
「クルマの将来像」がより具体的に表現されていたように思う。
先月 2日に弊社メールマガジンに掲載したコラム『東京モーターショー 2011
始まる』で紹介したように、今回のモーターショーでは、各社の環境性能に対
する具体的な取組みだけに留まらず、その他の付加価値への方向性や取組みが
随所にみられた。
『東京モーターショー 2011 始まる』
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6038
本レポートでは、皆様の実際の印象や東京モーターショーの将来像などにつ
いてお聞きしたアンケート結果を基に、今回の東京モーターショーを振り返っ
てみたい。
【一般来場者が期待するクルマ】
モーターショーに先立ち、一般来場者が期待するクルマ像について皆様にヒ
アリングした結果は、以下のようになった。
・「環境性を重視したクルマ」 :32 %
・「走行性を重視したクルマ」 :23 %
・「安全性を重視したクルマ」 :12 %
・「快適性/利便性を重視したクルマ」 :16 %
・「デザイン性を重視したクルマ」 :14 %
・「その他」 :3 %
一般来場者への検証結果とは言い切れないが、上記結果は、皆様方が一般来
場者(即ちユーザー)の「クルマへ期待する性能」をどう捉えているのか、推
察する一つの指標となろう。
「環境性を重視したクルマ」が 1/3 弱を占め最も票を集めた。ユーザーが将
来的に車の購入検討をする際にはやはり、燃費や電費などのランニングコスト
が大きなウエイトを占めることになろう。そのような意味でも環境性に対する
期待値は最も高いと思われる。
一方で、環境性以外の要素を選択された方も 2/3 以上を占めた。これらの要
素は、環境性能「プラスα」としての意味合いを持った選択結果であろう。中
でも「走行性を重視したクルマ」が 23 %と最も票を集め、クルマ本来の「走
り」を求める声が多いだろうとの結果になった。
その他「快適性/利便性」や「デザイン性」、「安全性」などが拮抗する結
果となっている。勿論、これら全ての要素を高次元で融合させたクルマが理想
ではある。しかし、相反する要素が多分にあると同時に、ユーザーへの訴求ポ
イントとしての「トンガリ」も薄まる。量産の可能性/価格面などを考慮する
と、なかなか実現を期待しにくい。
今後各自動車メーカーは、「環境性+走行性」「環境性+利便性」などの各
組合せにおいてターゲットユーザー(クルマを使う生活スタイル)を明確化し
た上で、商品開発を行い販売戦略を練っていくことが重要となるであろう。
【最も印象に残ったメーカー】
モーターショー終了後に皆様へ、最も印象に残った国産乗用車メーカーにつ
いてお聞きした結果は、以下のようになった。
・「トヨタ」 :29 %
・「日産」 :12 %
・「ホンダ」 :19 %
・「マツダ」 :17 %
・「スバル」 :13 %
・「三菱」 :4 %
・「スズキ」 :2 %
・「ダイハツ」 :1 %
・「その他」 :3 %
各ブースの雰囲気/構成/回答頂いた方々の着眼点の違いなど、様々な要素
が含まれていると思われるが、「トヨタ」「ホンダ」「マツダ」の順となった。
各社とも環境性能への具体的な方向性や取組みを明示していた中、HV /
PHEV / EV / FCHV などの次世代環境対応車を網羅的に展示していた「トヨタ」
「ホンダ」の印象度が最も高かった。
上記 2 社に対し、「マツダ」は SKYACTIV などの既存技術革新による環境対
応車で差別化を図るという明確なメッセージを印象付けて上位に入った。また
それぞれ 13 %と 12 %には留まったが、スバルの「環境性能+スポーツ」、
日産の「生活スタイルに合わせた EV ラインナップ」も明確なメッセージとし
て発信されていたと思う。
これら印象度の差は、各社の発信するメッセージに対するターゲットユーザー
像/範囲や、具現化可能なスピードといった観点からの差ではないだろうか。
モーターショーのプレスブリーフィングでトヨタ・豊田章男社長がスピーチ
していたように、将来的には様々な生活スタイルの中で求めらるクルマの性質
は、今よりももっと差別化が図られることになるであろう。
環境性能に限った話ではないが、それぞれのクルマがどの生活スタイル(領
域)を担当するのか、そして各自動車メーカーが今後どの領域に向けてクルマ
を提供していくのか、その動向に注目したい。
【世界中への発信を期待する技術】
今回のモーターショーは「世界一のテクノロジーショーとしての発信」とし
て、規模で勝る新興国のモーターショーと差別化を図ることも目的の一つとな
っていた。世界中への発信を最も期待する技術について、皆様にお聞きした結
果は以下のようになった。
・「燃費向上策などの、環境負荷低減に対する新技術や新システム」:36 %
・「特定部品やモジュールにおける、新素材開発や軽量化技術」 :14 %
・「安全な社会を前面に押し出す、安全新技術や新システム」 :19 %
・「高齢化社会を見据えた、快適利便性をアピールする技術」 :11 %
・「生活の一部としてクルマを組み込んだ、他産業/媒体と
IT で「つながる」技術」 :17 %
・「その他」 :3 %
「環境負荷低減に対する新技術や新システム」を選択された方が 1/3 以上に
上った。環境技術については、ハイブリッド車/電気自動車の市場投入など、
近年日本メーカーが主導権を握ってきた。コア技術に対する海外メーカーとの
技術供与も進んでいる。今後も継続して日本からの発信が期待される技術であ
る事に間違いはない。
但し、環境技術に関しては海外勢も急速に守備範囲を拡げてきている。今月
9日より開催されていた北米自動車ショーでは、フォードが中型車「フュージョ
ン」の環境対応車を発表している。小排気量化による燃費性能の大幅向上に加
え、同モデルでのハイブリッド車/プラグインハイブリッド車など、そのライ
ンナップは日本メーカーと肩を並べる。EV についても、「フォーカス・エレク
トリック」の供給をカリフォルニア州やニューヨーク州で既に開始するなど、
将来的な需要変化への体制構築に余念がない。
そのような海外勢の動きも受けてか、環境技術(だけ)ではなく他の技術を
選択された方も多く合計で 6 割を超えた。
中でも、全世界共通課題である「交通事故」に対する取組みとなる「安全新
技術や新システム」を選択された方が最も多く 19 %に上った。ユーザーのター
ゲットを絞り込んだ「快適利便性をアピールする技術」などに比べると、より
世界各国に共通してアピール可能な技術と言えよう。
このように、もはや環境対応技術は「基本」技術であり、日本メーカーの
「専売特許」ではなくなりつつある。プラスαとしてどのような技術が開発出
来るのか、それがユーザーにどのようなメリットをもたらすのか、環境に続く
「トレンド」を日本発で提示し主導権を握ることが重要になろう。
【将来的な東京モーターショーの位置づけ】
最後に、将来的な東京モーターショーの位置付けについて皆様にヒアリング
した結果は以下のようになった。
・「個々の新技術/システムを説明・アピールする場」 :21 %
・「クルマ個々の使用シーン/メリットを演出・アピールする場」 :10 %
・「個々の新技術とクルマの将来性との繋がりを
具現化・アピールする場」 :27 %
・「持続的な社会の中でのクルマの位置づけを、自動車業界全体で
演出・アピールする場」 :20 %
・「他産業との合同パビリオンなどの、クルマの将来ビジョンを
演出・アピールする場」 :21 %
・「その他」 :1 %
「新技術とクルマの将来性との繋がりをアピールする場」という意見が最も
多かったが、その他の選択肢も含め、票は拮抗している。これまで東京モーター
ショーでは、「1台のクルマ」という枠組みの中で「いかにクルマを表現するか」
が重要であった。アンケート結果からは、今後はそれだけでは物足りないとい
う意見も多いことが読み取れる。
20 %強の方が選択されたように、他産業(家/インフラ/家電機器等)との
「繋がり」を、パビリオン化した域内で「生活シーンとして展示する」という
のも面白い手法だと思う。
「クルマの将来」とは即ち「移動体の将来」を含む。徒歩/自転車/二輪車
/四輪車(クルマ)/電車/船舶/飛行機など幅広い移動体(移動手段)の中
で、どのような生活シーンにどのような性質のクルマがフィットする(フィッ
トしそうな)のかを、より具現化し的確に発信していく事こそ、今後の東京モー
ターショーに期待される役割なのではないだろうか。
その中で「もうクルマは必要ない」とする方々に対し新たなシーンを提供出
来れば理想である。勿論このような場合、シーンの創出といったところから取
組む必要がありハードルは高い。
先週開催された「オートモーティブワールド 2012」や昨年 5月に開催された
「人とくるまのテクノロジー展」など、将来技術に特化した展示会も多く開催
されている。個々の技術レベルは非常に高く、それぞれ将来の可能性を大いに
感じる製品ばかりだ。
そのような日本発最先端の技術が、将来の具体的な生活シーンの一部として
どのように寄与していくのか、を最上段で提案するような東京モーターショー
を 2年後には期待したい。
<川本 剛司>