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軽自動車について
今回は、「軽自動車について」をテーマとした以下 4 問のアンケート結果を踏
まえてレポートを配信致します。
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6280
・「軽自動車の規格について」
・「軽自動車の役割について」
・「超低価格車の日本への投入可能性について」
・「軽自動車の将来的な生産拠点について」
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【シェアを拡げる軽自動車市場】
国内新車販売台数における軽自動車の販売台数比率が拡大している。「軽高
登低」とも言われるが、軽自動車市場の重要性はご存知のとおりである。
[軽自動車販売比率][軽自動車販売台数][新車総販売台数]
[2002年] 31.6 % 1,830,700台 5,792,093台
[2011年] 36.1 % 1,521,100台 4,210,174台
(出典:日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会)
ダイハツやスズキは、第三のエコカーとして注目が集まる「ミラ イース」や
「アルト エコ」等の低燃費車を投入し、軽自動車市場で夫々約 3 割強を持つ
シェアの維持・向上に弾みをつけている。
また、各社の戦略はあるが、その他自動車メーカーも、軽自動車市場向けに
様々な取り組みを行ってきている。例えば、以下のような取り組みが挙げられ
る。
[ホンダ] :N BOX投入
[日産・三菱自] :軽自動車共同開発で提携
[トヨタ] :ダイハツから OEM 供給を受け、市場参入
【軽自動車の役割】
日本自動車工業会が発行している「軽自動車の使用実態調査報告書」に、軽
自動車に人気が集まる理由が記載されている。小型ならではの運転・操作面の
容易性に加えて、税金の安さ、燃費の良さ、車両価格の安さ等の経済合理性が
総合点として相対的に高いことが、軽自動車を選択する理由となっている。
そもそも国内市場において軽自動車が果たしている役割について考えてみた
い。軽自動車が税制面で優遇されてきた背景は、1950年代のモータリゼーショ
ンを推進するためと言われている。その為に、日本の道路事情に合わせたクル
マとして「国民車」構想の中で開発されたものが、軽自動車の原点である。
自動車の普及という当初の目的に関しては、既に十分な成果を出していると
言える。一方で、外部環境や消費者ニーズの変遷と共に、軽自動車の存在意義
自体が変わってきているものと考える。
軽自動車が果たしている現在の役割について、読者の皆様にお伺いしたとこ
ろ、下記の結果となった。
[軽自動車の役割]
・「高齢者、女性の日常移動やセカンドカー等の
小型車需要への対応」 :43 %
・「低燃費、軽量なクルマであることによる環境負荷の低減」 :23 %
・「農林水産業や運送業を営む中小企業等の輸送需要への対応」 :14 %
・「小型車の開発、量産による自動車メーカーの技術基盤の構築」 :11 %
・「その他」 : 9 %
「高齢者、女性の日常移動やセカンドカー等の小型車需要への対応」が最も
多いものとなった。ご回答の中でも、消費者が軽自動車を選ぶ理由として、車
両価格や維持費が安価であることが寄与している、とのご意見を多数頂いた。
現在、各自動車メーカーが新興国向けに機能や性能を割り切った低価格車の
開発を進めているが、安価な車両を追求するのであれば、日本にも、機能や性
能を割り切った車両価格 7 千米ドル以下と言われる超低価格車の投入可能性も
考えられるかもしれない。
国内の制度や規格との兼ね合いはあるが、将来的に、超低価格車を日本市場
へ投入する場合、どのような方法が良いかについて読者の皆様にお伺いした。
[超低価格車の日本への投入可能性について]
・「新興国向けに開発した車両を、
既存のブランド・チャネルで販売する」 :15 %
・「新興国向けに開発した車両を、
新たなブランド・チャネルで販売する」 :18 %
・「新興国向け車両を日本人向けの装備・仕様に変更し、
既存のブランド・チャネルで販売する」 :32 %
・「超低価格車は日本に投入されない(すべきではない)」 :27 %
・「その他」 : 8 %
結果は、「新興国向け車両を日本人向けの装備・仕様に変更し、既存のブラ
ンド・チャネルで販売する」が最も多いものとなった。
アンケートにお寄せ頂いた声の中には、「低価格志向であれば中古車で十分
」、「超低価格車を日本仕様にしたら、超低価格ではなくなる」といった声も
あった。
一方で、ホンダが、ブリオより更に小型・低価格で、軽自動車をベースにし
た排気量 800~ 900cc のモデルを新興国へ投入することを検討しているとの報
道もある。将来的には、こうした車両の装備・仕様を国内向けに変更し、日本
へ投入することも検討の余地があるかもしれない。
【グローバル競争下での軽自動車と新興国向け小型低価格車の方向性】
国内市場向けでガラパゴス化しているとも言われる軽自動車と、新興国を中
心としたグローバル市場向けの小型低価格車の開発を結び付けていく取り組み
は、自動車メーカーにとって、経営資源の有効活用の観点からも、今後、重要
な検討テーマとなるであろう。
日本自動車工業会の志賀会長が、4月 13日の定例記者会見で、「日本でしか
売れていない車が、本当に日本のメーカーにとっていいのかどうかを考える時
期がきている」と問題提起したとの報道がある。まさに、これは軽自動車にも
当て嵌まるのではないであろうか?
元々、軽自動車規格は、「全幅を拡大して、快適性向上や側面衝突時の安全
性向上を図るべき」、「排気量は 現行の 660cc ではなく 800cc 位が燃料効率
の観点からも良い」といった見直し議論があった。
弊社メルマガ読者の皆様に「軽自動車の規格(排気量・車両サイズ等)の在
り方」について伺ったところ、集計結果は以下の通りとなった。
[軽自動車の規格(排気量・車両サイズ等)の在り方]
・「現状のままで良い」 :30 %
・「規格を排気量・車格拡大方向に見直すべき」 :27 %
・「規格を排気量・車格縮小方向に見直すべき」 :19 %
・「規格を撤廃すべき」 :14 %
・「その他」 : 6 %
(規格ではなく税制等の優遇内容を見直すべき、新たな規格を設定するべ
き等)
「その他」も含めると、70 %の方から軽自動車規格を見直した方が良いとの
ご意見を頂いたこととなる。
仮に軽自動車規格をよりグローバルレベルで共有化する方向に見直すとすれ
ば、国内市場で販売する軽自動車の生産はどのような影響を受けるかについて
読者の皆様にお伺いした。
[軽自動車の将来的な生産拠点について]
・「現在と大きく変わらず、国内販売分は
国内で部品を調達し、生産する」 :11 %
・「海外での生産車両との部品共有化が進むことから、
部品輸入が増加する」 :25 %
・「海外から基幹部品を輸入し、国内で最終組立や
国内仕様・装備への変更を行う形態が増加する」 :17 %
・「国内仕様・装備を備えた車両を海外で生産し、
日本に逆輸入する形態が増加する。」 :38 %
・「その他」 : 9 %
結果は、「国内仕様・装備を備えた車両を海外で生産し、日本に逆輸入する
形態が増える」が最も多くなった。
2010年に日産がマーチの逆輸入を開始したことに加えて、三菱自動車も今夏
にミラージュをタイから日本市場へ投入することを発表している。このように、
タイから小型低価格車を海外で生産し、日本に逆輸入するという流れが出来つ
つある。
雇用の問題もあり、慎重な対応が必要ではあるが、グローバル戦略の観点か
ら部品共通化に繋がる可能性も踏まえて、軽自動車規格の見直しについても更
に一歩突っ込んだ検討を行うステージにきているのではないだろうか。
<横山 満久>