日系自動車メーカーの注力領域について

今回は、「日系自動車メーカーの注力領域」をテーマとした以下のアンケート
結果を踏まえてレポートを配信致します。

https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6662

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【日産が現地開発機能拡充】

 日産がアセアン地域の研究開発機能である日産テクニカルセンターサウスイー
ストアジア(NTCSEA)の拡充計画を発表した(2013年 2月 6日プレスリリース)。

 テストコース、シャシーとエンジンの台上実験を含む実験設備などの追加や、
スタッフの増員により現地の責任範囲を拡大し、同地域の顧客ニーズへの対応
力を高めることが目的とされている。

 拡充計画の具体的内容の一つに、2015年までに、同地域内で販売されるモデ
ルについては、現在日本のグローバル R&D が担当している車両の初期エンジニ
アリング以降の全ての開発プロセスを NTCSEA が行うことが挙げられている。
 
【商品企画機能を含めた現地化】

 昨年、トヨタが米国を始めとして段階的に中国などに開発機能を現地化して
いくという報道もあったように、開発機能を現地化する動きは、上記の発表に
限らず、各自動車メーカー・各地域で進展している。

 以前、弊社メルマガで行った 1 クリックアンケートの結果では、開発機能の
更に上流にある商品企画機能も含めて現地に任せるべきと回答された方が 40
%を占めた。

 寧ろ、商品企画機能こそ現地に任せるべきと考えられる方が多い。同アンケー
トで、商品企画は現地に任せるべきだが開発/設計は日本で実施すべきと回答
された方が 25 %おり、商品企画機能を現地に任せるべきと考える方は上記と
の合算で 65 %を占める。

アンケートの詳細は以下をご参照ください。
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6446
 
【背景にある意図】

 商品企画機能を現地化すべきと考える方が多い背景の一つに、海外含め各自
動車メーカーの製造品質が向上し差別化要因となり難くなったことが考えられ
る。

 最近に始まったことではないが、例えば現代は、Tier2 ・ 3 を含めて品質指
導をするといった日系自動車メーカーとは異なる方法で、製造品質を改善させ
てきた。07年の「i30」以降は、エクステリア・インテリアの洗練性など製造品
質より上流面での向上もよく言われる。

 こうした中で、出発点にある商品企画機能の競争力を高めることが必要で、
現地化により顧客ニーズを的確に反映した商品づくりを目指すべきという意図
があると思う。

 先月の弊社 1 クリックアンケートで、今後、日系自動車メーカーが注力すべ
き領域をお聞きした結果も、以下のとおり商品企画領域と回答された方が最も
多かった。

・現地ニーズの汲み上げ等、商品企画領域                  :48%
・大規模モジュール化等、開発・設計領域                     :20%
・更なる現地化の推進等、生産・購買領域                   :11%
・新興国の販売網拡充等、販売・マーケティング領域    :15%
・その他                                                                            :6%
 
【顧客ニーズ反映にあたっての検討事項】

 現地拠点・機能を拡充していくと同時に、現地固有の顧客ニーズ収集から始
まり意思決定を含めたプロセスをどのように構築していくかも重要となろう。

 例えば、デザインの話ではあるが、トヨタではデザインを決定するプロセス
の中に社員評価を組み込んでおり、従来は社員評価の過程で得られる意見を修
正点として反映していた。

 様々な修正点を反映することで万人受けという点での改善が進む一方で個性
は失われてしまうため、最近は社員の意見はあくまで参考として扱い、デザイ
ナーやチーフエンジニアなどの意思をより尊重する個性重視の方針に変更した
という報道がある。

 現地固有の顧客ニーズを反映していく上でも、幅広いニーズの中からどれを
選択して、どの程度付加価値を高めていくかという考え方を検討する必要があ
るだろう。

 また、商品企画領域より下流領域とのバランスをどう取るかという検討も重
要と考える。

 例えば、開発・生産・購買領域が連携して進めている大規模モジュール化の
方針により、商品企画における顧客ニーズの反映項目に制約が生じてしまう可
能性もあるかもしれない。

 顧客ニーズの反映にあたっては、商品企画のインプット側の流れ・プロセス
をどう構築するかや、アウトプット側とのバランスをどう取るかにも、各社の
戦略・方針が表れてくると思う。

                             

<宝来(加藤) 啓>