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国内自動車ディーラーの取り組みテーマについて
今回は、「国内自動車ディーラーの取り組みテーマ」に関する以下のアンケー
ト結果を踏まえてレポートを配信致します。
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6732
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【新車ディーラー業界全体の動向】
2013年 3月期の新車販売台数は、エコカー補助金の影響もあり登録車と軽自
動車の合計で 521 万台と、2008年 3月期以来の 500 万台を超える水準に回復
した。
2013年 3月期の新車ディーラーの経営状況については、日本自動車販売協会
連合会(自販連)の発表が待たれるが、新車販売台数が減少傾向にある中で、
新車ディーラー業界全体がどのように変化したか、比較可能な 2008年 3月期と
2012年 3月期で見てみたい。
自動車ディーラー経営状況調査報告書(平成 24年 3月期版)
全車種店総合の推移
単位)億円
2008年3月期 2012年3月期 増減率
総新車販売台数(千台) 5,320 4,753 ▲11%
売上高 128,242 113,378 ▲12%
粗利益(収入手数料含む) 27,582 25,103 ▲9%
販管費 25,687 21,866 ▲15%
営業利益 1,895 3,237 +71%
(粗利益内訳)
新車粗利 7,629 7,149 ▲6%
中古車粗利 2,796 2,642 ▲5%
サービス・部品 9,994 9,375 ▲6%
収入手数料 7,023 5,707 ▲19%
その他 140 229 +64%
(注)
同報告書は自販連に加盟するディーラーへのアンケート調査結果であり、一部
の自販連未加盟やアンケート未回答のディーラーは含まれていない。
上記(注)の前提はあるが、全体の売上高は、総新車販売台数の減少率 ▲11
%と同じように、▲12 %の減少となっている。
売上高の内訳は開示されていないが、新車部門はサービス部門等に比べて売
上単価が高く台数と掛け合わせた売上高に与える影響が大きく、売上高全体が
総新車販売台数と同じような傾向になっていると考えられる。
一方で、粗利益の減少率は ▲9 %と総新車販売台数程には減少していない。
粗利益の内訳を見ると、 収入手数料の減少率が ▲19 %と大きい。詳細は割
愛するが、収入手数料の中でも、車両収入手数料(メーカーからのインセンテ
ィブ)の減少が大きい。
新車、中古車、サービス部門の粗利益は、総新車販売台数程には減少してお
らず、値引き抑制や、いわゆるストックビジネスの底堅さが見られる。
営業利益を見ると、販管費を減少させることにより、2008年 3月期に比べ、
寧ろ増加している。収益が減少する中で、より一層のコスト削減を進めている
ことが伺える。
【販売会社の取り組み事例】
こうしたマクロ動向の中で、2008年と 2012年の比較で売上高を増加させ、粗
利ベースで増益も果たしている「ホンダオート三重」の事例を紹介したい。同
社では、以下の取り組みを実施している。
・「安心ネットワークシステム(地域限定型ロードサービス)」
顧客の車に故障や事故などが発生した場合、営業エリア内であれば 30分以内
に駆けつける。携帯電話を活用したサービスで、故障・事故の連絡が入ると、
全社員の携帯へ一斉にメールを配信し、近くにいる社員が早急に現場へ駆け
つけられる仕組み。
・「安心カーライフ倶楽部」
安心ネットワークの緊急出動データを分析すると、出動理由の 6 割が故障で、
4 割が事故であること。また、故障による出動は 点検を実施していれば大半
が防げたものであることが判明し、12 ヶ月点検に関する会員制のサービスを
開始。会員顧客には緊急出動時の出張料が無料、板金修理が必要な場合は 5
万円を割引などの特典がある。
・「三重中DB(ミエナカデータベース)」の構築
営業スタッフの受注報告等の情報を集約・蓄積し、営業や顧客対応の成功例・
失敗例、上司・部下のコメントを全社員が閲覧できるようにし、ノウハウを
蓄積・共有。
上記以外の取り組みや詳細については、「2012 CRM ベストプラクティス白書」
(一般社団法人 CRM 協議会)に詳しいので、ご参照頂ければ幸いである。
【IT の活用余地】
先月の弊社 1 クリックアンケートで国内自動車ディーラーの取り組みテーマ
についてお聞きしたところ、結果は以下のようになった。
・販売拠点の再編や組織・人事体制の見直し等による効率化 :28%
・既存ビジネス領域(車両販売やサービス、ファイナンス)で
他事業者へ流出している部分の囲い込み :23%
・SS やロードサービス展開等、自動車領域におけるビジネス拡大 :23%
・店舗をカルチャー講座の場として提供する等、
自動車領域以外での付加価値提供検討 :12%
・その他(海外進出等) :14%
「ホンダオート三重」の取り組みの中で、「三重中 DB」 は上記アンケート
選択肢の効率化、「安心カーライフ倶楽部」は既存ビジネス領域の囲い込み、
「安心ネットワークシステム」は自動車領域におけるビジネス拡大に関連する
ものである。
そして、取り組みの気付きを与え具現化にあたり活用しているのがデータ解
析や IT システムである。
最近では、データ解析の対象が膨大な個人の取引情報や車両走行・状態デー
タなど非構造化データと言われる領域まで可能になってきている。国としても、
経済産業省が個人情報を二次利用するために必要な施策をまとめるなど、個人
情報の活用を促す動きが活発化している。
弊社では親会社のアビームコンサルティングと共同で、いわゆるビッグデー
タ対応のサービスを提供している。自動車販売の領域でも、例えば、買い替え
を促す効果的施策の導出や、顧客満足度向上 KPI の統計学的抽出などで活用で
きると考えている。
販売会社個社に加えて、自動車メーカー(販売ネットワーク全体)において
も、縮小均衡だけではない解決策として、今改めて、IT 活用の検討余地がある
と考える。
<宝来(加藤) 啓>