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自動運転車両に対して技術革新を期待する項目について
今回は、「自動運転車両」をテーマとした以下のアンケート結果を踏まえてレ
ポートを配信致します。
https://www.sc-abeam.com/sc/library_s/enquete/6785.html
・自動運転車両に対して技術革新を期待する項目について
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自動運転車両の存在が世の中に急速に認知され、その将来性が現実味を帯び
始めるきっかけとなったのは、 2010年の Google 社による発表に端を発すると
ころが大きいだろう。
Google 社は、「Google Maps」などの地図サービス充実という他事業との高
い親和性や、地図情報を基にした計算技術という同社の得意分野を重ね合わせ、
自動運転技術の高度化を強力に推進している。
自動車メーカーではない Google 社が、このような車両開発に乗り出した目
的の一つに、将来的な自動車ビジネスの変革がある。ハードウェアより、ソフ
トウェアの価値に重点が置かれる自動運転車両において、その中核を形成する
OS(Operation System) の開発でいち早く主導権を握りたいという思いだ。
もちろん、自動車メーカー各社もそれぞれ技術開発を推進している。
【北米メーカーの取組み】
北米メーカーの内、自動運転車両の開発で先行するのは、米カーネギーメロ
ン大学と車両の共同開発を進めている GM 社である。同社は Cadillac ブラン
ドで、高速道路に限定した自動運転車両を 2017年までに実用化することを、世
界に先駆けて発表した。最終的には一般道を含めたほぼ全ての環境へ対応させ
る予定だ。
尚、Google 社や GM 社などは積極的に公道実験を行っているが、これにはネ
バダ州やカリフォルニア州など、公道実験を許可する免許を発行している国の
後押しが大きい。
またご周知のようにシリコンバレーなどには、高度な IT 技術を有する企業
が数多く集積しており、特に IT 技術を真髄とする自動運転車両の開発は、産
官学の相互連携という形で米国が先行している。
【欧州メーカーの取組み】
欧州メーカーの中で本技術に積極的に取り組んでいるのは、VW グループと
BMW 社である。特に VW グループの Audi 社は、米スタンフォード大学と共同
開発を進めており、様々なデータ取得に欠かせない公道での実証実験を米国と
の連携を深めることで推進している。
Audi 社は、今年 1月に米ネバダ州ラスベガスで開催された「2013 インター
ナショナル CES」において、スマートフォン連動の自動駐車技術を実演し注目
を浴びた。
また、商用車が主な対象となるが、Volvo 社も隊列走行という自動運転技術
の開発を推進している。先頭車両はドライバーによる運転だが、後続車両は無
人で走れるようにして隊列を組んでいる。
Vovlo 社の実証実験では、最高速度 85km/h にも関わらず、車間距離を 4m
に設定しており非常に短い。このため、ミリ波レーダーなどのセンサだけでな
く、車車間通信も駆使しながら、先行車両の情報を取得している。
【日系メーカーの取組み】
上述した北米/欧州メーカーに対し、日系メーカーでの開発も進んでいる。
トヨタは、2012年 9月にスタンフォード大学と、自動運転技術に関する共同
研究を進めると発表した。先の「2013 インターナショナル CES」では実験車両
を発表するなど、最近では米国ミシガン州の公道で実験を進めている。
日産も、 2012年 10月に日本で開催された 「CEATEC Japan 2012」 で、自動
運転技術に注力していく方針を示している。この CEATEC 会場で、リーフをベー
スとした車両で無人駐車を実演しており、実際の開発が急ピッチで進んでいる
ことを証明している。
但し、大規模な実証実験とその効果確認という意味では、一般道を走行し莫
大なデータ集積を進める米国が一歩抜きん出ており、欧州や日本が追従すると
いう形になっていることは否めないであろう。
【自動運転車両に対して技術革新を期待する項目】
このように、自動車メーカー以外の企業も巻き込みながら進む自動運転車両
であるが、将来的な実用化に向けてどのような技術革新が期待されるのか、皆
様にお聞きした結果は以下のようになった。
・Map上の正確な自車位置取得を目指す、GPS機能等の向上 :17 %
・自車周辺の正確な情報取得を目指す、センサ技術等の向上 :22 %
・取得情報を基にした、自車の運動制御技術の向上 :27 %
・インフラや他車に対する、情報発信技術の向上 :14 %
・緊急時のマニュアル運転モードなど、マンマシンインターフェースの向上
:15 %
・その他 : 5 %
結果、「取得情報を基にした、自車の運転制御技術の向上」と回答された方が
最も多く 27 % を占めた。続いて、センサ技術の向上 (22 %) や GPS 機能の
向上 (17 %) など、自車位置或いは周辺状況の正確な位置情報取得に関する項
目への期待度が高い結果となった。
自車の周辺状況を取得する技術に関しては、ミリ波レーダやレーザーレーダ、
360度カメラなど様々な技術が実用化の途上にある。特定状況下ではあるものの、
実際に製品化も進んでおり、更なる高精度化や領域拡大が期待される領域であ
る。
また、広義の周辺状況とも言うべき Map 上の自車位置把握は、自動運転走行
にとって必要不可欠なものであろう。最新 Map や交通規則の反映/タイムリー
な更新に加え、自車走行位置のレーンレベルでの詳細な把握は欠かせない。車
両に自車位置をまず認識「させる」という意味では最初の投入情報であり、自
動運転車両ならずとも高精度化を期待する項目である。
Google 社が 「Google Maps」 と連携を取りながら進めている実証実験は、
地図情報の高精度化と車両へのフィードバックという、自車情報の正確な把握
を目指した総合的な取組みの一例である。
また、最も票を集めた「自車の運転制御技術の向上」は、ヒトが持つ「認知
/判断/操作」の自動化と、スムーズな車両運動制御を連携させるという、極
めて高度な技術領域である。
特に「認知/判断/操作」など人工知能をも含む領域に関しては、多種多様
な実証実験を繰り返すことで、走行時の様々なケースを「学習させる」ことが、
製品化の為の第一歩となろう。
その他、インフラとの連携やマンマシンインターフェースの向上なども含め、
自動運転技術実用化の為の共通ワードは「情報」である。クルマがどのような
「情報」を発信/取得し、自車状況に基づいてどのような「情報」を車内の各
機能に発信して走行車両を制御するのか、ドアツードアの移動の全てを「精確
な情報」に委ねることになる。
ココまで来ると、もはや既存の車両開発では立ち往かないのは自明である。
異業種はもとより産官学でより緊密な連携を構築し、検討を進めていくべきで
あろう。
Google 社の自動運転車両の開発チームリーダーである、セバスチャン・スラ
ン氏は次のように述べている。
「後世の人々が振り返って、車を人が運転していたなんて全く馬鹿げている、
と思うようになることを期待しています。」
エンジンの回転音、ギアの変速音、ステアリング切り始めの応答性等、クル
マを操ることは、これらを楽しむことだと未だに少し考えている筆者は、既に
時代遅れなのかもしれない。
<川本 剛司>