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新興国向け商品が現地顧客に最も強く訴求すべき点について
今回は、「新興国向け商品が現地顧客に最も強く訴求すべき点について」をテーマとした以下のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6847
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【新興国向け商品が現地顧客に最も強く訴求すべき点】
2014年の市場投入に向け、去る 7月 15日 にインドにて日産自動車がダット
サンブランド第 1 号となるコンパクトカー、GO のデザインを公開した。ダッ
トサンは新興国市場特化型ブランドとして、今後インド以外にもインドネシア、
ロシア、南アに順次展開していくと発表されている。
新興国市場へ商品を投入していく上で、先進国向けモデルやグローバルカー
といった方策に加え、新興国向けモデル/ブランドの展開は、従来から各自動
車メーカー共通の取り組みテーマとなっている。そのような取り組みの中で、
今後、日系自動車メーカーが新興国向け商品において、現地顧客に最も強く訴
求すべき点を先月の弊社 1 クリックアンケートでお聞きした。結果は、以下の
とおりであった。
1 位 価格 (44 %)
2 位 耐久性 (29 %)
3 位 利便性・快適性(10 %)
4 位 環境性 ( 8 %)
5 位 安全性 ( 7 %)
6 位 趣味性・嗜好性( 1 %)
【低価格が必要条件であることについて】
1 位が価格(が低いこと)という結果については、読者の皆様も想定されて
いたかと思う。
例えば、 2012年の日本における車種別販売台数第 1 位であったトヨタ・プ
リウスが販売価格約 220 万円からであるのに対し、今回ダットサンが発表され
たインドの売れ筋車種であるマルチスズキ・アルト 800 の販売価格は邦貨換算
約 40 万円からである。経済水準や物価が低い新興国において、その市場に適
正な低価格での販売が求められることは大前提となる。
実際に、既に日系自動車メーカーにより販売市場を新興国に限定して開発・
販売されているモデルにおいても、トヨタ・エティオスの邦貨換算約 80 万円
やホンダ・ブリオの邦貨換算約 65 万円(ともにインドにおける販売価格)の
ように、先進国標準と比較すると明らかな低価格が実現されている。冒頭で触
れたダットサン・ GO も邦貨換算約 65 万円からの販売を目指すとアナウンス
されている。
(邦貨換算は 2013年 8月 15日現在の為替レート 1 ルピー=1.6 円 を使用)
【低価格に加えた品質・性能面での訴求】
一方で、低価格ばかりを強く訴求するべきであろうかということにも留意し
たい。低価格を売りにしている現地自動車メーカー等と同じ訴求点で競争する
よりも、日系自動車メーカーの強みである品質・性能面も訴求をしていくべき
であろう。
冒頭のアンケート結果で、1 位の「価格」以外、すなわち「耐久性」、「利
便性・快適性」、「環境性」、「安全性」、「趣味性・嗜好性」を選択された
方が過半を超えた。
これは総じて、低価格であることは必要条件ながら、価格とのバランスを取
りつつ販売市場に応じた品質・性能要件を盛り込んでいくことが重要という意
見の現われではないだろうか。
改めて、ダットサンのブランドコンセプトを見てみると、敷居が低くお求め
易い(friendly, easy)とともに頑丈で頼りになる(durable, reliable)など
の表現が多数ある。
これには、顧客に「低価格」だけでなく「耐久性」を訴求する狙いがあると
思われる。さらに、日産自動車が、GO をニッサン・ GO ではなく、ダットサン・
GO として発表したのは、このメッセージをより明確に新興国の顧客に訴求しよ
うとしていると考えられる。
また、トヨタ・エティオスについても、低価格という扱いながらも、酷暑に
対応する強力な冷房や埃を除去するエアフィルターなど、インド市場の地域性
を反映した仕様を訴求している。
このように、新興国向け商品が訴求すべき点として、低価格であるというこ
とは必要条件であるが、それに加えた品質・性能面で何を訴求するかが重要で
あると考える。
【新興国向け商品の訴求点の今後】
アンケートでは、「価格」以外の回答として、2 位「耐久性」と答えた方が
多かったが、3 位以下の「利便性・快適性」、「環境性」、「安全性」、「趣
味性・嗜好性」といった選択肢にも一定数の回答が寄せられた。加えて、「整
備性」「デザイン」といった声もあった。
ダットサンが「低価格だが壊れない」という方向性をアピールしているよう
に、「低価格だが○○」「低価格だが××」といった方向性を明確に定め、他
ブランドや他モデルとの差別化を進めることによって顧客に分かりやすく訴求
することが、各日系自動車メーカーの新興国向け商品に求められると思う。
その「○○」「××」にあたる訴求点は、気候や地理といった一般条件に加
え、クルマに消費者が求めるものや使われ方、慣習、道路インフラなどの各国
固有の背景によって多様化するであろうし、経済成長の過程によって変化も
すると思われるが、それらに柔軟に対応した商品開発によって訴求点を創造し
ていくことが重要だと考える。
<宋 太賢>