グローバルモデルとしての新型シビックの狙い

◆ホンダ、「シビック」を5年ぶりに全面改良、ハイブリッド車も発売予定

8代目となる新型車は国内では1800ccの4ドアセダンのみを販売する。「入門車の役割は『フィット』に譲り、中型車としてセダン市場に新しい風を起こす」(福井社長)として、斬新的なデザインや、質感向上などを図った。

ボディサイズは全長4540×全幅1750×全高1440(ハイブリッドは1435)mm。計器類を上下2ヶ所に分散させた「マルチプレックスメーター」も初採用。前方車との車間距離を自動制御したり、速度や車間距離から追突の危険性を検知して制動をかけるブレーキなどの安全装備も設定。5速AT。187万9500~214.2万円。ハイブリッドは219万4500~236万2500円。月販計画計2500台。

「シビック」は米国では既に新型を先行販売しており、世界160カ国以上に投入へ。「世界中の顧客の期待を大きく超える車に仕上がった」と福井社長

<2005年09月22日号掲載記事>

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9月 22日にホンダは、シビックのフルモデルチェンジを発表した。8 代目となる新型シビックは同日から発売されているが、これに加え、ハイブリッド仕様も 11月 22日から発売されることになった。

シビックは世界生産類型 16 百万台を超え、160 カ国以上で販売されてきたホンダを代表するグローバルモデルである。販売台数シェア拡大の牽引役として期待がかかる新型シビックも世界各国で生産・販売される計画であり、それぞれ市場に合わせたボディタイプ・パワートレインが用意されているという。

今回は、この新型シビックの特徴を、日米欧各市場での狙いに焦点を当てながら考慮してみたい。

【新型シビックの主な特徴】

(1)先進的なデザイン
まず目に付くのが、「先進的なモノフォルム・デザイン」と公表されたスポーティなデザインである。
傾斜したフロントウィンドウ、オデッセイ譲りのワイド&ロープロモーション、プリウスに対抗するようなワンモーションデザインで、シャープなイメージを持たせている。

(2)大型化したボディ
ボディサイズも、先代シビックに比べ 70mm 高く、55mm 幅広くなっており、昨今の欧州 C セグメント車に対抗できる室内空間のゆとりを持つ。今回国内市場に投入されたセダンタイプ以外にも、今年のシカゴモーターショーでは米国に投入されると予想されるクーペタイプが、ジュネーブモーターショーでは欧州に投入予定のハッチバックタイプが公開されている。

(3)新開発の 1.8L エンジン
国内仕様に搭載される 1.8L エンジンは、今回のシビックのモデルチェンジに合わせて開発されたものである。
ホンダ得意の VTEC (可変バルブタイミング・リフト機構)を高度化し、低負荷時に吸入バルブが閉じるタイミングを遅らせることで混合気の吸入量をコントロールし、吸気抵抗を低減し、出力を犠牲にすることなく、低燃費を達成している。
これが、今回の発表の「2L クラスの出力と 1.5L クラスの低燃費の両立」に繋がっている。

(4)1クラス上の安全・快適装備
上下 2分割のマルチプレックスメーターやアクティブヘッドレストなどの先進技術が標準装備。
さらに、これまで高級車にしか装備されてこなかったミリ波レーダーによる車速/車間制御クルーズコントロール機能(IHCC)や追突軽減ブレーキ(CSM)、シートベルト連動型警告機能(E-プリテンショナー)などの先進の安全技術もオプションで用意されている。
(5)ハイブリッドシステムも大きく進化
シビックハイブリッドも大きく進化する。新開発の VTEC 機構により、低回転・高回転・気筒休止の 3 段階でバルブ制御を行う 1.3L エンジン、出力を従来比 1.5 倍に高めた独自開発のモーター、同じく出力を従来比約 3 割向上したバッテリー、そして独自開発インバータを組み合わせた新しいハイブリッドシステムを搭載する。
システム出力は従来の約 20 %、10 ・ 15 モード燃費は約 5 %向上したという。
協調回生ブレーキや低負荷時のモーター単独走行など、トヨタプリウスと真っ向勝負できるハイブリッドカーと言える。

【日米欧各市場での狙い】
(1)日本市場
日本市場には、今回発売となったセダンタイプのみの投入が予定されている。
1972年に発売された初代以降、国産ハッチバックの代表的モデルであったシビックであるが、現在ホンダの国内販売の中心を担うヒットモデルである小型ハッチバックのフィットとのカニバリゼーションを回避したのであろう。
近年の国内市場は、コンパクトカーとミニバンが席巻しており、ミドルクラスの車種は苦戦を強いられている。
とは言え、不調の国内販売を脱却するためには、カローラ、ティーダ、に対抗するミドルクラスのヒットモデルが不可欠であり、今回の新型シビックに対するホンダの期待は大きく、ゆとりのボディサイズ、1 クラス上の安全・快適装備にもこの狙いが伺える。

(2)北米市場
北米には、セダン・クーペの二つのボディタイプが導入される予定である。米国では、先代シビックの購買層の中心は 20~ 30 代の男性と言われており、今回のスポーティなデザインも、若いユーザー層をターゲットにしたものだと考えられる。
また、ハイブリッド仕様も投入されると予想される。米国で好調なトヨタプリウスと互角に戦える環境性能と先進的なデザインに加え、乗用車として十分な室内空間やトランク容量を確保しながら、価格も同レベルであり、先代モデルよりもシェア拡大が期待できる。
(3)欧州市場
欧州では、いわゆる C セグメントの主流である 5 ドア、3 ドアのハッチバックを投入する予定である。
VW Golf、Peugeot 307 等、ヒットモデルが占めるこのセグメントは、欧州市場で最も激戦区であり、競合車種に対抗できるデザイン、性能、高級感が求められる。
新型シビックの大型化、先進装備は欧州市場も意識していることであろう。
また、日本に投入される 1.8L ガソリンエンジンに加え、2.2L、1.3L の 2 つのディーゼルエンジンが投入される予定である。
この 2.2L ディーゼルエンジンは、ホンダが自社開発したものであり、今年のアコードの欧州市場での販売の大きな原動力となっている。先代シビックの欧州仕様車にはいすゞ製ディーゼルエンジンを搭載していたが、このアコード用エンジンを改良して搭載することになるという。

若年層にも訴求する斬新なデザイン。低燃費を追求しながらも、ホンダらしさの原点とも言える走行性能はしっかり確保。環境性能を向上させながら実用性も確保したハイブリッドカー。5 代目以降歴代受賞してきた日本カーオブザイヤーの受賞に向けて、ホンダの意気込みが伝わってくる。課題の日本、欧州での販売台数拡大にどこまで貢献できるか、今後の販売動向に注目したい。

<本條 聡>