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AYAの徒然草(14) 『ナンバーワンを目指すこと』
仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。
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第14回 『ナンバーワンを目指すこと』
3~ 4年前の大ヒット曲、SMAP の「世界に一つだけの花」は、当時、一世を風靡し、街中のあちらこちらで耳にするような流行歌で、高校野球の行進曲にもなっていましたよね。私もお気に入りの歌の 1 つで、今でも自然と口ずさんでしまいます。この曲、特に歌詞が良いのです。勇気付けられるような、温かい詞なんですよ。
この曲のテーマは、「競争して 1 番になることよりも、個性をもっていることが大切だ」ということなんですが、それを、お花屋さんの店先に並んでいる花に例えて表現しています。お花屋さんの花はどの花もみんなきれいで比べられない、どの花も誇らしげに花を咲かせることだけに一生懸命になっている、1つとして同じものはないから「ナンバーワン」になんてならなくてもいい、特別な「オンリーワン」になればいいんだ、という内容の歌詞になっています。
当時の長引く不況の下、ぎすぎすした競争社会から早く脱出したいという願う風潮があり、その祈りとこの歌のテーマが合致し、老若男女問わず幅広く支持を受け、ヒットしたのだと思います。
そして当時は、この曲にあやかって「オンリーワン」という言葉が流行っていましたよね。「あなたのためのオンリーワン企業」とか、「私たちはオンリーワンを目指します!」とか。企業のキャッチフレーズによく使われていたことを覚えています。
でも、そもそも、「オンリーワン」って、目指したりするようなものなのかなぁとちょっと疑問に思います。さきほどの歌詞のように、花屋の店先に並んでいる花が、どの花もきれいで誇らしげに見え、美しいのはわかります。確かに比べられません。また、恋人や家族が、自分にとってかけがえのない存在「オンリーワン」であること、また、自分もそうでありたいと願う気持ちもわかります。しかし、社会で、人や企業が「オンリーワン」を目指すことって、価値のある事なんでしょうか。この歌の詞のように、「ナンバーワンにならなくてもいい。一生懸命ならそれでいい。」なんていう平和主義的な考えは、特に、ビジネスの世界では必要ないんじゃないかなぁと思うのは私だけでしょうか。
「オンリーワン」とは、個性的であればそれでいい、存在していること自体が素晴らしいことなんだという意味ですよね。1 番にならなくても個性を発揮できればそれでいいなんていう考えは、1 番になれなかった人の負け惜しみ、都合の良い言い訳のような気がしてなりません。競争社会で生きている私たちは、1番になることを目指すことや、それに向かって努力をすることを素晴らしいことだと自然に考えます。何事にも序列を付けることは、習慣にすらなっていると思います。そんな中で、のんきに「オンリーワン」を目指すことはナンセンスだと思うのです。
オリンピック選手で、最初から 2 番目の銀メダルや 3 番目の銅メダルを目指して、血の滲むような努力と練習を重ねる選手はいませんよね。あくまで、目標は 1 番の金メダルに掲げているはずです。そもそも、スポーツの世界で「ナンバーワン」になることを目指していなければ、オリンピックはもちろん、WBC もワールドカップもなくてもいいものになってしまいますよね。また、もっと意味がないのは、最初から目標を 2 番目や 3 番目になることに揚げ、「ナンバーワン」になれなくてもそれで満足し、妥協してしまうことだと思います。
それに、1 番は知っていても 2 番目って意外と知らないものなんです。3 番目ともなると、見当もつかないこともあるかもしれません。例えば、日本で 1番高い山は富士山ですよね。では、みなさんは 2 番目に高い山を言えますか?日本で 1 番長い川は信濃川ですよね。では 2 番目に長い川は?日本で 1 番大きい湖は琵琶湖ですよね。では 2 番目に大きい湖は?みなさん、全部答えられますか?(私は答えられません・・・。)こんなふうに、1 番以外は、なかなか認知してもらえないのが現実なんです。(ちなみに、2 番目に高い山は北岳、2 番目に長い川は利根川、2 番目に大きい湖は霞ヶ浦です。)
だから、人は、どんな小さなことでもいい、どんな些細なことでもいいから、とにかく 1 番を目指して 1 番になるべきだと思います。気付いてもらえない2 番目や 3 番目じゃ意味がないのです。なんでもいいから自分の得意分野を見つけて、これだけは誰にも負けない、そんな分野で「ナンバーワン」を目指し、地道な努力を続けることが大事だと思います。人は、競争することによって、強い精神力や素晴らしい技術を身につけ、成長していくからです。そして、小さな成功を積み重ねて行って、自信をつけ、次第に大きなことをやれるようになるのが理想だと思うのです。だから、「ナンバーワン」を目指すことは、常に自分の才能を磨きたい、そして自信に繋げたいという意思の表れだとも思います。
オリンピック選手のように目標を「世界でナンバーワン」に揚げなくても、事業本部内で英語が 1 番流暢に話せるとか、部署内でタイプ打ちが 1 番速いとか、自分自身が納得できるほんとに小さな範囲の些細なことの「ナンバーワン」であってもいいわけです。そう考えると、もしかすると「ナンバーワン」を目指すことは、結果的には個性を磨き、特別な「オンリーワン」を目指している事になるのかもしれませんね。
<佐藤 彩子>