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地球温暖化対策を目的とした「京都議定書」が発効、世界中…
◆地球温暖化対策を目的とした「京都議定書」が発効、世界中で記念イベント
発効を受け、日本は、2008年から2012年の間に排出する温室効果ガスの平均を1990年の排出量より6%削減する義務を負う事になる。しかし、2003年度の時点で1990年度比で8%も増加しており、約14%の削減が必要になる。
<2005年02月16日号掲載記事>
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2月 16日に京都議定書が正式に発効となったことを受け、先週はこれに関する様々なニュースが紙面を賑わした。政治家の発言は勿論、環境税などの問題も議論となり、産業界でも様々な動きがあった。
ご存知の方も多いと思うが、京都議定書とこれを受けて制定された地球温暖化対策推進法の概要は以下の通りである。
【京都議定書】
先進国に法的拘束力のある温室効果ガスの削減目標を定めた初の国際議定書。1997年 12月の京都会議(正式名称は COP3:気候変動枠組み条約第三回締約国会議)にて設定された。
・目標期間: 2008~2012年
・対象ガス: 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(1990年基準)HFC、PFC、SF6(1995年基準)
・目標値: 先進国全体で基準年比5%削減
各国別:日本 6 %、米国 7 %、EU8 %、カナダ6%等(発展途上国には義務を課していない。)
・批准国: 日本、EU 諸国、ロシア他141の国と地域
(2005年2月現在)
【地球温暖化推進対策法】
(正式名称:地球温暖化対策の推進に関する法律)
京都議定書の採択を受け、1998年に制定された国内対応法。
国や地方自治体、企業、国民の温室効果ガス削減に向けた責務、役割を明らかにしている。
2002年に改正され、国民、地方自治体の取り組みが強化されている。
本法を受け、政府は首相を本部長とする地球温暖化対策推進本部を 3月末までに開き、目標達成計画を策定するとしている。
各種報道されている通り、基準年の 6 %削減という日本のノルマは決してたやすいものではない。CO2 だけをとっても、2003年の日本の排出量は、1990年比 8 %上回っており、ノルマ達成には 14 %削減することが要求されるからである。実際、毎日新聞調査によると、地球温暖化対策推進法に基づいて「実行計画」として 04年度までの削減目標を設定した 25 都道府県のうち、目標を達成した、もしくは達成できるとしているのはわずか 6 都県という情報もある。
この削減義務を達成するために、自動車産業に課せられる役割は大きい。というのも、日本の CO2 排出量の約 2 割に相当する 256 百万トン(2000年度)が交通機関等の運輸部門から排出されており、そのうちの約 90 %を自動車からの排出が占めているからである。1990年から 2000年の 10年間に 21 %増加しており、このペースで増加すると、2010年には 295 百万トンに達すると予想されている。上記地球温暖化推進対策法のベースとなっている地球温暖化対策推進大綱では、2010年度の CO2 排出量目標は 250 百万トンに設定されており、自然体の増加見込みからは 45 百万トン、2000年度実績から 6 百万トン削減することが求められている。
自動車からの CO2 排出量を削減するためには、何かと話題の多い大型車、ディーゼルエンジンの対策が重要で、自家用乗用車にはあまり関係ない話しと思われる方がいるかもしれない。たしかに、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などによる大気汚染の問題については、ディーゼルエンジンの対応が迫られており、政府側の規制導入に合わせ、自動車メーカーや部品メーカーも規制に対応する商品開発に積極的に取り組んでいる。しかし、こと CO2 に関して言えば、自動車の排出量の約 55 %が自家用乗用車が占めているのが実態である。
しかし、これまで NOx、PM の問題ほど大きく話題になってこなかったのは、自動車業界が積極的に燃費改善に努めてきた結果、2010年の目標を十分に達成できる見通しだからである。1995年には全社乗用車の平均 10・15 モード燃費が 12.3km/L であったのが、2002年には 14.9km/L に向上しており、 2005年度中には販売割合で 9 割強の乗用車が燃費目標を早期達成する見通しである。
乗用車の燃費改善の大きな要因としては可変バルブ機構の普及が大きな要因を占めている。1995年には数%であったが、現在では 2010年目標としていた7 割強まで普及している。今後、低燃費の小型乗用車の更なるシェア拡大やハイブリッドカー等の低公害車の普及拡大も期待され、更なる温室効果ガス削減が期待される。
ところで、京都議定書の問題において必ず議論になるのが、世界の CO2 の約24 %を排出する米国が加わっていないことである。2001年 3月に、ブッシュ大統領は「CO2 削減は米国の経済的利益に反する」「発展途上国が削減義務を免れるのは不公平」として離脱を表明した。国内の政治・経済的な背景があるのが実態であろうが、米国では地球温暖化防止は言われるほどの大きな被害は発生しないという学説も出されている。しかし、世界最大の自動車大国が、ほとんど自動車が普及していない国と比べて不公平だと主張し、自国の利益を追求するのに対し、世界の同意を得られないのは当然とも言える。
この問題において、もう一つ重要な国は、現在発展途上国扱いとなっている中国である。2000年時点で中国の CO2 排出量は世界の約 12 %に達しており、世界第 2 位の CO2 排出国である。しかし、人口一人あたりの排出量は日本の1/3 以下であり、現在の中国の経済成長を考えれば、必然的に増加する方向に進むと見られ、将来、米国に匹敵する CO2 排出国になるとの予想も出ている。
今回の京都議定書で削減対象となるのは、批准した先進国のみであり、全世界の温室効果ガス排出量の 33 %に過ぎない。自動車産業が大きく影響を及ぼしている地球温暖化の防止には、将来の二大自動車大国の協力が不可欠である。
話しが変わるが、環境庁によると、家庭でも冷暖房の温度設定等により、温室効果ガス排出量を基準年の 2.8 %削減できるという。クルマに関するところでは、以下のような取り組みが挙げられている。
・「週2日往復8kmの車の運転を控える」
⇒ 全国で年間約 7.4 百万トンの CO2 削減効果
(一世帯あたり約8,000円の節約)
・「1日5分間のアイドリングストップを行う」
⇒ 全国で年間約 1.6 百万トンの CO2 削減効果
(一世帯あたり約2,000円の節約)
http://www.gov-online.go.jp/publicity/tsushin/200503/topics_e.html
当たり前のことかもしれないが、日本の削減義務達成できるかどうか、米国や中国云々という議論をすることも必要だろうが、まずは我々一人ひとりができることから始めてみるべきではないだろうか。地球温暖化対策はまだ始まったばかりなのだから。
<本條 聡>