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富士重工、水平対向ディーゼルエンジンを自社開発し、欧州…
◆富士重工、水平対向ディーゼルエンジンを自社開発し、欧州に投入へ
2008年をめどに国内で生産して「レガシィ」などに搭載、欧州市場へ投入へ
<2004年07月07日号掲載記事>
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今回は、富士重工の欧州戦略について考えてみたい。
富士重工は2002年5月に2006年までに中期経営計画「FDR-1」を発表しているが、この中に自動車販売台数について、以下目標が設定されている。99年には62千台を達成していたものの、その後低迷していた欧州市場に欧州市場においても、3万台増の年間6万台規模の販売を目標としている。
. 01年度実績 06年度目標 (増加率)
合計 556 760 +37%
日本 279 350 +25%
北米 205 280 +37%
欧州 30 60 +100%
その他 42 70 +67%
(単位:千台)
まず、欧州戦略の状況の前に、まず、現状の国内・海外の計画達成状況を見てみることとする。
03年度の販売台数は、世界全体で553千台であった。このうち、日本では、「レガシィ」のCOTY受賞効果による大幅増加に加え、「R2」が好調であったこともあり、262千台と前期を1万台上回った。05年には高性能ミニバン、06年には新型プレミアム・コンパクトカーの2モデルを追加投入予定であり、「レガシィ」の販売台数が毎年約5万台であることからも、この2モデルで約10万台増の350千台(上記FDR-1)を目指すと見られる。
海外販売台数を見ると、297千台であった。「レガシィ」のモデルチェンジにより、北米における現地生産(SIA)が減少となったことで、前期より13千台の微減となっているが、米国(187千台)、豪州(30千台)では過去最多販売台数を記録している。また、05年にはSIAで新クロスオーバーカーを生産開始し、北米市場に導入する予定であり、北米市場での28万台という販売台数を目指している。
以上のように、日本、北米とも計画は着実に進行していると見られる。
ここで、欧州についてであるが、03年度販売台数は47千台となっており、前期よりも増加しており、06年の60千台という目標にも手が届きそうなところまできているとも言える。この内訳を見てみると、「フォレスター」「インプレッサ」「レガシィ」の3モデルが毎年10~15千台で推移している。
一方で、他の日本車メーカー各社は、過去長らく苦戦していた欧州市場においても、順調に販売台数を伸ばしている。商品力の高い新モデル投入や現地生産拡大が貢献しているが、もう一つの要因として、ディーゼルエンジン搭載車種の充実化があげられる。
トヨタは、04年には欧州で80万台販売予定であるが、「ヤリス」「アベンシス」「カローラ」といった主力車種にはディーゼルエンジン車が設定されている。ディーゼルエンジン自体の現地生産も準備中であり、05年には年間15万台生産する計画である。
日産もルノー製ディーゼルエンジンを搭載した車種(「マイクラ」「プリメーラ」等)を現地生産している。
ホンダも「シビック」にはいすゞ製ディーゼルエンジンを調達していたが、「アコード」には自社新開発のディーゼルエンジンを搭載している。
マツダは、「マツダ2(デミオ)」にはFord/PSAが開発したディーゼルエンジンを搭載している他、「マツダ6(アテンザ)」「MPV」等には自社開発のディーゼルエンジン搭載車を設定している。
欧州では、近年ディーゼル乗用車の普及が加速しており、新車販売時のディーゼルエンジン比率は 00年に3割を超え、02年には 40 %に達している。ディーゼルエンジン普及の加速化であるが、地球温暖化対策に関する規制・政策によるところが大きいことに加え、コモンレールをはじめとする近年の高圧燃料噴射技術開発により、出力・静粛性・クリーン化等の性能面での向上も図られており、これが普及加速を後押ししている。
他の日本車メーカーの主力モデルは、現地生産していることもあり、1モデルあたりの販売台数が5~10万台規模のものも多数あるが、日本からの輸出車種においても、「マツダ6」は03年に約9万台を販売し、欧州Eセグメントでの販売台数が、メルセデスベンツEクラス、BMW5シリーズに次ぐ3位を記録している。
欧州における「レガシィ」他の販売台数拡大のためにもディーゼルエンジン搭載車種設定は必須であり、ガソリンとの混流ラインによるコスト削減、フレキシビリティ維持に加え、プレミアムブランドを目指す上で、水平対向エンジンという独自技術を活かした新ディーゼルエンジンの自社開発というのは、非常に効率的な戦略と考えられる。
富士重工の世界シェアは約1%であり、日本、北米では1%を超えているものの、欧州では1%(約14万台)にはまだまだ及ばないと同時に、シェア拡大の余地も十分に残されているとも言える。特に、スイス、ドイツ、イギリス等の販売台数が多い国と他の国との格差が大きく、欧州全域をカバーする販売体制整備が、他の日本車メーカーに比べて遅れており、このあたりを強化することが有効であろう。
そして、プレミアムブランドとしての「スバル」を目指すのであれば、多数のプレミアムブランドがひしめく欧州市場での成功が持つ意義は大きく、全社的にも重要な課題として取り組んでいると考えられる。
<本條 聡>