アルプス電気、バッテリー不要のタイヤ空気圧モニタリング…

◆アルプス電気、バッテリー不要のタイヤ空気圧モニタリングシステムを完成8月からサンプル出荷を開始。年内の量産化に向け、フィールドテストへ
<2004年4月23日号掲載記事>
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タイヤ空気圧センサーは、自動車用電子デバイスの中でも昨今勢いのある部品の一つである。特に、米国でのFord車のリコール問題等もあり、タイヤの安全性に対する消費者意識が向上していること、スペアタイヤ不要で安全性・軽量化・設計自由度に大きく貢献するランフラットタイヤの普及が進みつつあることにより、その重要度・注目度は増している。
また、米国では、昨年よりTREAD法(Transporation Recall Enhancement, Accountability and Document Act)が施行となった。これは、リコールの報告義務適用範囲拡大や罰則強化を定め、自動車の安全基準を明確にしたものであり、この中で、タイヤ空気圧警報装置の装着も、段階的に義務付けられている。

現在タイヤ空気圧警報システムと呼ばれるものには、大きく2種類ある。ABSに使われている車輪速センサー等でタイヤの空気圧を監視する間接式タイヤ空気圧警報システム(DDS)と、タイヤのバルブ部分に搭載したセンサーが空気圧を監視する直接指揮タイヤ空気圧警報システム(TPMS)である。

コスト面で優位性の高いDDSは、既に一部大衆車への採用も進んでおり、トヨタはカローラシリーズ等へも採用している。しかし、業界での注目度は、4輪独立監視により、モニタリング精度が高く、駐停車時も監視可能であるTPMSの方が高く、高級車を中心に採用されつつある。今回アルプス電気が発表したものもTPMSである。センサーを取り付けるタイヤ内部の環境条件が厳しいことなど、これまで普及への課題も大きかったと思われる。

今回アルプス電気が発表したものは、従来のTPMSとは異なり、タイヤ側のセンサー装置をバッテリーレスとすることで、タイヤ側センサーデバイスの小型化、軽量化、信頼性を向上させると同時に、タイヤ形状の安定化により安全性向上にも貢献するものである。今回の技術が同システムの普及を加速し、自動車の安全性を向上させることを期待したい。

今回の記事については、その技術開発についても着目したい。アルプス電気の発表によると、同社は、独IQ-Mobil社が保有する基本・応用技術や特許を使用する独占ライセンス契約を昨年締結し、今回の開発に至ったというものである。ベンチャー企業の画期的・独創的な技術アイデアと、大手電子部品メーカーとしての開発・製造技術ノウハウをマッチングさせることで商品化に至ったものと思われる。

国内、海外を問わず、画期的、独創的な技術を持つ、開発するベンチャー企業は無数にあるが、商品化に至り、消費者に普及するケースは少ないと想像する。こういった革新的な技術の開発については、資金、開発力をはじめとする多大なリソースを持つ大企業と、奇抜なアイデアを持つベンチャー企業とのマッチングという組み合せには、今後一層期待したい。

住商アビーム自動車総研としても、こういった事業に対する支援の一助を担いたいと考えている。

<本條 聡>