業界人が読みたい1冊『クルマはかくして作られる』

第1回 『クルマはかくして作られる』
(著者:福野礼一郎、発行元:二玄社)
——————————————————————————–

クルマ通の読者の方々は、月刊CG(カーグラフィック)の人気連載をまとめ、続編も出ている本書をご存知の方は多いと思うが、まだ読まれてない方には是非ともお勧めしたい1冊である。

読者の方々の中には、自動車業界に長年携わり、毎日のように車に接してきているが、ドアやシートなど、普段見慣れたこの部品は誰がどうやって作っているのだろう、と疑問に持たれる方も少なくないだろう。
『クルマはかくして作られる』は、意外と知られていない自動車の部品の設計、製造方法を教えてくれると同時に、モノ作りの奥深さを改めて教えてくれる本である。

本書は、トヨタ自動車系列のサプライヤー、特に「センチュリー」で採用されている部品を中心に製造方法や現場の取材をまとめたものだが、その分野はウィンドウガラスからキーロックまで多岐にわたっており、その一つ一つが、複雑な製法・工程と現場の努力を忠実に描写している。
また、本書が木、ガラス、皮、ゴム等、主に生活に身近な素材分野の部品が取り上げられているのに対し、続編の『超クルマはかくして作られる』では、ブレーキ、トランスミッション、タイヤ等、自動車としての機能を支えている代表的部品を取り上げているのも興味深い。

普段、自動車工場というと溶接ロボットが自動でクルマを組み立てる大工場をイメージするが、実際には、これはそれぞれ現場で作られた部品を組み立てている工程であり、ここに至るまでにも多数の部品メーカーで、多数の人々の努力が、自動車の製造の重要な役割を担っているのである。

業界人だけを対象にしたような技術専門書のように難しくならないように導入やコラムを交えながら、一方で上辺だけの物語にもならないように写真、図解を駆使して詳細且つわかりやすく解説してある本書には、自動車に馴染みのない読者は勿論、自動車業界に深く携わっている方にも、改めて気付かされる内容が十分にあるはずである。
是非とも一読頂きたい1冊である。

<本條 聡>